Cafe24は、広告・在庫・資金の各データを連携させる「トータルコマースマーケティング」を通じ、EC事業者の収益構造の改善に乗り出す。オンライン市場は拡大が続く一方、広告費の上昇や欠品、過剰在庫が利益を圧迫しており、3領域を一体で運用する仕組みづくりが課題になっているためだ。
国家統計ポータル(KOSIS)によると、2025年の国内オンラインショッピング取引額は274兆9442億ウォンとなり、前年から約12兆5000億ウォン増えた。市場規模は拡大基調が続いている。
ただ、出店事業者の収益環境は必ずしも改善していない。広告費が上昇するなか、売上が増えても最終利益は伸びにくいとの声が多い。売上成長と利益拡大が連動しにくい構造が背景にある。
Cafe24は、その要因として広告、在庫、資金が分断管理されている点を挙げる。オンラインショップでは、広告が需要を生み、在庫がその需要に対応し、さらに在庫補充や広告運用を支える資金が必要になる。3つが連動して初めて、売上を利益につなげやすくなるという見方だ。
実際には、多くのショップでこの3軸が別々に動いている。広告を強化しても在庫が追い付かなければ欠品が起き、販売機会の損失につながる。逆に在庫を絞れば機会損失が増え、厚く持てば在庫コストが膨らむ。加えて広告費は先払い負担があるため、資金余力の乏しい出店者ほど広告効果を検証しにくい。
こうした損失はデータでも裏付けられる。IHL Groupが2024年に公表した在庫ひずみに関する分析によると、オフライン流通業界は2024年、欠品と過剰在庫によって約1兆7000億ドル(約255兆円)の損失を被った。内訳は欠品による損失が1兆2000億ドル(約180兆円)、過剰在庫による損失が5540億ドル(約83兆1000億円)だった。
調査対象はオフライン流通だが、オンラインショップでも構造は大きく変わらない。欠品中の商品に広告費を投じたり、販売可能性の低い在庫に予算を配分したりすれば、同様の損失が発生するためだ。広告が需要を生み、在庫がそれを受け止め、資金が全体の運用を支える――この連動が欠けると、売上の一部は利益に転換されにくくなる。
そのため、EC運営の軸足は、広告費を積み増す量的競争から、広告・在庫・資金を単一のデータフローで連携させる運用へと移りつつある。
データ基盤を活用した運用の有効性は、海外調査でも示されている。DoubleVerifyとSapio Researchの調査では、マーケターの46%が入札や配信プロセスの最適化にAIを活用していると回答した。前年の41%から5ポイント上昇した。
在庫分野でも、McKinseyはAIベースの需要予測によって予測誤差を20〜50%削減でき、欠品による販売損失を最大65%抑制できると分析している。
Cafe24が重視するのは、これらを個別最適にとどめず連動させることだ。どの商品が実際に利益へ貢献しているかを在庫データで把握して初めて、広告投下の対象を適切に絞り込める。また、広告費の先払い負担を軽減できれば、その判断を遅れなく実行しやすくなるとしている。
Cafe24のマーケティングセンターは、こうした構造を3段階で設計した。広告導入から拡大、最適化までを、ブランドの成長段階に応じて順次連携させる構成だ。
第1段階は資金だ。「売上連動型広告」は、広告費を先に投下し、売上発生後に精算する仕組みを採る。初期の資金負担を抑え、広告効果を先に検証できるようにした。成果が見える前に費用だけが先行する従来型の課題に対応する狙いがある。
次の段階では、どの商品に広告を投下するかを見極める必要がある。ここで活用するのが「在庫データ基盤マーケティング(AIM)」だ。販売データと在庫データを組み合わせて分析し、広告出稿する商品と発注量を同時に判断する。欠品商品の広告出稿や滞留在庫の放置を減らす設計としている。
最終段階は実行精度の向上だ。「次世代マーケティングソリューション(NextGen)」では、ビッグデータとAIを活用して広告クリエイティブを自動生成し、成果をリアルタイムで分析しながら運用戦略を調整する。広告費の無駄を抑え、同じ予算でもより多くのコンバージョンを生み出すことを目指す。
Cafe24によると、3サービスを併用した事例では成果の差が表れた。ファッションブランド「KIKIKO」は、閑散期に広告費を12%削減しながら、コンバージョン売上は29%増加し、ROASは579%から855%に上昇した。
「PIXEM」は、資金不足と頻繁な欠品が繰り返される構造を改善し、同期間の売上は約3.8倍、購入件数は約5.8倍に増えた。また、広告、発注、在庫を単一主体が統合運用したA社では、在庫回転率が年間9.2回から20.7回に上昇し、欠品は0件だった。
Cafe24は、これらの事例について、広告予算の単純な積み増しではなく、データ連携によって同じ費用からより多くの売上を生み出した成果だと位置付けている。
今後の焦点は再現性と拡張性だ。特定ブランドの成功にとどまらず、規模や業種の異なる出店事業者でも同様の効果を実現できるかが問われる。Cafe24は、広告・在庫・資金を同一データ基盤で連動させることで、利益構造を把握しやすくなるとみている。274兆ウォン規模に拡大した市場で、次の競争力を左右するのは、より大きな広告予算ではなく、より精緻なデータ連携になりそうだ。