AIインフラ投資の重心がGPUからメモリへ移りつつあるとの見方が出ている。写真=Shutterstock

NVIDIAがAI投資ブームの最大の受益企業とみなされてきた一方で、足元では市場の視線に変化が出ている。NVIDIA株は5月の高値から15%下落した半面、DRAM大手Micronの企業価値はほぼ3倍に拡大した。AIインフラ投資の重心がGPUからメモリへ移りつつあるとの見方が強まっている。

米ITメディアTechCrunchが9日(現地時間)、Bloomberg報道を引用して伝えたところによると、NVIDIA株は5月の高値から15%下落した。売上高予想は引き続き伸びているものの、バリュエーションはS&P500の平均を下回り、投資家がNVIDIAの予想利益1ドル当たりに与える評価額も米大型株平均より低くなったという。

一方、AIインフラ市場から資金が引き揚げられているわけではない。資金の向かう先が変わっている。同じ時期にMicronの企業価値はほぼ3倍となり、メモリがデータセンター増設の新たなボトルネックとして、AI投資の主要テーマに浮上した。

これは、NVIDIAの技術力を高く評価してきた市場にとっては皮肉な展開でもある。NVIDIAはAI研究の基盤となるプログラミングプラットフォーム「CUDA」を開発し、想定を上回るペースでGPU開発を進めてきた。GPU自体も、極めて複雑な装置の一つとされる。

これに対し、メモリメーカーの成長ストーリーは比較的シンプルだ。各社が生産する高帯域幅メモリ(HBM)は、プロセッサとデータを可能な限り高速にやり取りするための部品で、この20年、改良を積み重ねてきた技術にすぎないという見方もある。それでも供給拡大が需要増に追いつかないなか、市場価値は急上昇し、メモリ各社は過去1年で価格を最大10倍まで引き上げることができたとされる。

Datatrackの集計によると、公開市場でのスポット価格ベースのDRAM価格は2023年以降、急ピッチで上昇した。2025年夏に技術的な飛躍が起きたようにも見えるが、実際には業界全体が、データセンター拡張に必要なメモリ需要を深刻に過小評価していたという。

これとは対照的に、Ornnの集計では、NVIDIA H100の時間当たりスポット価格は過去1年で5月の約3.20ドルをピークに、その後は下落が続いた。NVIDIA株も5月以降は弱含みで推移している。NVIDIAの企業価値はコンピュート価格の動向に左右されやすく、その価格は下がっている。一方で、Micronなどメモリ企業の価値はDRAM価格に連動し、こちらは上昇基調が続いているという。

この差が生じている背景について、Ornnの共同創業者兼最高技術責任者(CTO)ウェイン・ネルムス氏は、単純な需給の問題だと説明した。Google、Amazon、Microsoft、OpenAIは、NVIDIAへの依存度を下げるため独自のカスタムプロセッサを投入している。これらのチップがNVIDIAの最新製品ほど高性能でなくても、コンピュート価格を押し下げるには十分だという。

ネルムス氏は「GPUやアクセラレータを手掛ける企業は増えている。どの企業も自前のシリコンを作ろうとしているが、自前のDRAMを作る企業はない」と述べた。さらに「HBMで大きな技術的ブレークスルーが起きるか、需給構造が変わるか、あるいはメモリ市場に新規参入がない限り、現状はおおむね続くだろう」と付け加えた。

NVIDIAにとっては、自社の成功が競争激化を招いた側面もある。コンピュートの価値を自ら証明した結果、多くの企業が参入を狙う市場の中心に立つことになった。その一方で、相対的にシンプルな技術を持つメモリ企業が、市場の周縁で収益機会を積み上げている構図だ。

足元のAIインフラ市場では、演算性能そのものよりも、それを支えるメモリ供給の希少性に高い価値が置かれている。今後の焦点は、GPU供給の拡大と自社開発チップの普及でコンピュート価格の下落が続くのか、それともHBMを含むメモリ供給が需要に追いつき、現在の価格優位が薄れるのかにある。AIインフラ投資マネーがどの工程の不足資源に集中するかが、関連企業の株価動向を左右しそうだ。

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