SpaceXの上場に伴う企業価値の上昇を受け、初期から在籍する従業員の間で多額の含み益が発生している。イーロン・マスク氏は、製造現場の従事者を含む数千人規模の社員がミリオネアになった可能性があるとの見方を示した。
Business Insiderが9日付で報じたところによると、マスク氏はインタビューで、SpaceXの生産ラインで働く社員を含む複数の従業員について、保有株の評価額が100万ドル(約1億5000万円)を超えている可能性があると語った。
元溶接工の事例に関する質問に対し、マスク氏は「該当するのは1人の溶接工にとどまらない。生産ラインで働いてきた数千人が対象だ」と説明した。そのうえで、創業初期に入社した社員であれば、保有株の価値が100万ドルを超えている可能性が高いとした。SpaceXは6月に時価総額約2兆ドルで上場しており、従業員が保有する株式の価値も大きく押し上げられたという。
マスク氏は、社員への株式付与を重視してきた報酬哲学にも言及した。「会社にいる全員が会社の株式を受け取るべきだと、常に考えてきた」と述べ、企業成長の果実を従業員と共有すべきだとの考えを示した。「会社が成長すれば、従業員もともに豊かになる仕組みにすべきだ」とも語った。
こうした方針のもと、社内では株式報酬制度が運用されてきたとされる。元従業員の証言によれば、SpaceXは入社時に加え、年次評価や昇進のタイミングでもストックオプションを付与していた。従業員は通常、年2回設けられていた非公開の売却機会を通じて、保有株の一部を会社や投資家に売却できたという。
市場では上場前から、SpaceXのIPOが新たな富裕層を大量に生み出すとの見方が出ていた。プレIPO取引プラットフォーム「ヒル・マーケッツ」の創業者アンドリュー・ベンソン氏は、SpaceXの上場によって新たに4400人のミリオネアと、資産1億ドル超の富裕層400人以上が生まれる可能性があると試算していた。
もっとも、株価は上場直後の急騰後にやや調整している。公開価格135ドルだったSpaceX株は、上場後数日で200ドルを上回ったが、9日の終値は148ドルを下回った。従業員の資産価値も高値圏からは目減りしたものの、初期にストックオプションを取得した社員には依然として大きな含み益が残っているとみられる。
経営陣は保有株の活用も進めている。グウィン・ショットウェル最高経営責任者(CEO)と夫は、約3億ドル相当のSpaceX株を「トランプ口座」に寄付した。これは、2025年初めから2028年末までに生まれるすべての米国の子どもを対象に、1000ドルを預け入れた口座を開設する政府プログラムだという。
マスク氏は今回のインタビューで、上場効果に加えて長期の宇宙開発計画についても改めて語った。今後10年以内に月面基地を建設し、数千人、場合によっては数万人が月へ行けるようにしたいと述べた。Starshipについては「最終的には数万トン規模の貨物を月へ運ぶよう設計されている」とし、月と火星に都市を築くことが目標だとした。
火星計画についても、従来の構想をあらためて示した。マスク氏は「順調に進めば、約5年以内に最初の人類を火星へ送り、10~12年以内には数千人が火星へ向かうことになるだろう」と述べた。SpaceXの上場は、従業員への株式報酬のインパクトと、長期の宇宙開発を支える資金基盤の大きさを改めて印象づけた格好で、今後は株価の推移と株式報酬制度の持続性が焦点となる。