ロシア下院の金融市場委員会は、暗号資産規制法案の修正案を承認した。居住者にウォレットアドレスの開示を求める規定は削除し、届出対象を保有残高と取引規模に絞り込んだ。一方で、非適格投資家の投資対象や年間購入額には制限を設け、送金規制も強化する。
ブロックチェーン関連メディアのCoinpostが8日(現地時間)に報じた。修正案は第2読会に先立ってまとめられ、金融市場委員会のアナトリー・アクサコフ委員長が公式Telegramチャンネルで内容を公表した。
今回の修正で最も大きいのは、届出項目の見直しだ。従来案にあったウォレットアドレスの提出義務は外し、居住者の届出対象を暗号資産の保有残高と取引規模に限定した。アクサコフ委員長は、個人情報の漏えいや悪用のリスクを抑える狙いがあると説明した。
司法保護の扱いも改めた。修正案には、過去に届出をしていなかった場合でも暗号資産保有について司法上の保護を認める条項を新たに盛り込んだ。アクサコフ委員長によると、憲法裁判所の見解を反映した内容という。
個人投資家に関しては、適格投資家と非適格投資家の区分を維持する。非適格投資家の投資対象は流動性の高い暗号資産に限定し、規制対象の仲介事業者1社ごとの年間購入上限は30万ルーブルとした。市場参加の余地を残しつつ、対象資産と投資額を絞る仕組みだ。
資金移動に対する統制も強める。規制取引所は、購入した暗号資産を購入者本人のウォレットにのみ送金できる。海外または第三者への大口送金には48時間の保留期間を設ける。不正行為の防止を目的とした措置として、こうした規定を盛り込んだ。
法案には、対外貿易企業向けの決済インフラに関する内容も含めた。企業は暗号資産やステーブルコインを使った国際決済を、国内外のインフラを通じて利用できるようになる。暗号資産を対外決済手段として制度上位置付ける流れを示す内容といえる。
ロシアでは7月1日から、輸出入企業がビットコインとステーブルコインを対外貿易決済に利用できる法的枠組みが施行されている。取引は中央銀行が承認した8つのプラットフォームに限られる。2025年の暗号資産を活用した対外貿易額は1兆ルーブルに達し、中国、トルコ、インドとの取引が中心だった。
一方で、ロシア中央銀行はデジタルルーブルの普及も並行して進めている。中央銀行総裁は今週開かれた中央銀行カンファレンスで、広範な普及に向けた準備はすべて完了したと述べた。これを受け、ロシアは9月1日までに、システム上重要な銀行12行と大手小売事業者にデジタルルーブルの受け入れを義務付ける手続きを進めている。
修正案は第2読会を経て本格審議に入る見通しだ。ただ、自己管理型ウォレットの利用規制を盛り込むかどうかについて、アクサコフ委員長は言及していない。今後の審議では、対外決済の拡大、個人投資家向け規制、デジタルルーブル普及をどう並行して制度化していくかが焦点となる。