Strategyは、ビットコイン価格が上昇しない局面でも、自社の債務返済力や配当支払い余力を試算できる対話型の信用モデルを公開した。優先株配当やドル流動性を巡る懸念が高まる中、同社の資本構成がどの程度持続可能かを定量的に示す狙いがある。
ブロックチェーンメディアのU.Todayによると、このモデルの公開は、Strategyが優先株配当とドル流動性の確保を目的に、ビットコイン3588枚を売却したと正式に確認してから2日後に行われた。売却額は2億1600万ドルだった。
今回のツールは、Strategyの事業モデルを巡るウォール街のリスク論争を意識した内容となっている。ビットコインの強気相場がなくても、どの程度の期間にわたり支払い義務を維持できるのかを数値で示す構成だ。
同社を率いるマイケル・セイラーはSNSへの投稿で、「デジタル・クレジットは、主要な市場リスク要因が観測可能で均質な資産であるビットコインに集約されるため、透明性が高い」と説明した。
同社が示した前提条件では、現在の資本構成には一定の耐久力があるとしている。主要指標の1つである配当継続年数については、ビットコイン市場の成長が完全に止まると仮定しても、暗号資産準備金528億7000万ドルとドル準備金25億5000万ドルを背景に、配当義務を30年間賄えると試算した。
損益分岐点も提示した。新たな資金調達を行わずに、すべてのクーポンと配当を安定して支払うには、ビットコイン価格が年平均3.33%上昇すれば足りるとしている。急騰ではなく、比較的小幅な上昇でも現行の資本構成を維持できる点を強調した形だ。
債務関連の指標も公表した。転換社債67億1400万ドルと優先株154億6400万ドルを合わせた総義務は221億7800万ドル。この総義務に対し、現在の資産カバレッジを示す「BTCレーティング」は2.7倍としている。
同社は、こうした数値が長期の調整局面でも投資家向け支払いの安定性を支えると説明している。
この説明は、最近の資金調達構造の変化とも重なる。Strategyはこれまでビットコインの買い増しを軸とする戦略を維持してきたが、STRCを組み込んだ資本戦略に移行して以降、運用のあり方に変化が生じている。
7月に入り、STRC株の出来高加重平均価格が額面の100ドルを下回ると、同社は市場価格を支えるため、配当率を12.00%に引き上げた。
配当負担の拡大により、定期的な法定通貨の流入を確保する必要性も高まった。これを受けてStrategyは、取締役会が承認した最大12億5000万ドル規模のビットコイン現金化プログラムを活用している。直近のビットコイン売却も、こうした支払い構造と連動した動きとみられる。
セイラーは、これを単なる流動性不足への対処ではなく、新たな資本構成の一部と位置付ける。同社は、準備資産を管理下で現金化する仕組みが「デジタル・クレジット資本フレームワーク」に組み込まれていると説明しており、従来の受動的な保有戦略から、より柔軟な資産運用体制へ移行していることを示した。
今回の試算ツールは、格付け機関主導のリスク評価にも一石を投じる内容だ。S&Pによる投機的等級の評価に対し、投資家自身が債務の持続可能性を直接検証できる材料を提示する狙いがある。
ビットコイン相場が継続的に上昇しない前提でも、支払い構造を維持できるかどうかを透明性高く検証できることが、Strategyの中核的なメッセージといえそうだ。