「Elements Clo」は、生成AIの活用が対話やコード生成にとどまらず、材料探索にも広がっていることを示した。写真=Shutterstock

Alibaba Group Holding傘下の研究組織DAMO Academyは、超伝導材料の探索に特化したAIエージェント「Elements Clo」を公表し、これまで報告されていなかった超伝導候補化合物4種を見いだし、実験で確認したと発表した。

香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が3日付で報じた。Elements Cloは、生成AIを科学研究に応用した特化型システムで、大量の論文と結晶構造データを解析し、超伝導の可能性が高い新物質を探索する。DAMO Academyは、超伝導体探索に向けた業界初のAIエージェントと位置付けている。

超伝導体は、極低温下で電気抵抗がゼロになり、磁場を排除する性質を持つ。電力網の高効率化や量子コンピューティング、高速磁気浮上列車など次世代技術の中核材料として期待される一方、超伝導現象を完全に説明する理論は確立していない。このため新物質の発見は、長年にわたり試行錯誤型の実験に大きく依存してきた。

DAMO Academyによると、Elements Cloはこうした探索の制約を減らす狙いで開発した。分子と結晶構造1億2500万件を学習した、10億パラメータ規模の特化型基盤モデルをベースとする。研究には中国人民大学と中国科学院大学も参加した。

探索のスピードも成果として打ち出した。Elements CloはGPUによる計算を28時間実施し、安定した結晶構造約240万件を絞り込んだ。その中から超伝導の可能性がある候補化合物約6万8000件を抽出し、追加分析を経て実験価値の高い候補に絞った結果、最終的に未報告だった4種の化合物を実験で確認したとしている。

今回の事例は、テクノロジー企業によるAI活用が、文章生成やコード作成から科学研究の現場へと広がっていることを示す。科学文献の探索や大規模データ解析を通じて、研究者が検証すべき仮説や候補を提示する使い方が広がっており、Alibabaもその流れに沿って研究開発への応用事例を示した格好だ。

新材料開発は、AIの効果が大きい分野の1つとされる。新物質の探索には膨大な化合物を検討する必要があり、AIが探索工程のボトルネックを減らせば、研究期間の短縮につながるためだ。超伝導体データベースとして広く使われる「SuperCon」に登録された物質も約2000種にとどまるという。

焦点は、AIが候補探索段階の負荷をどこまで下げられるかにある。Alibabaは、Elements Cloによって論文調査から構造選別、候補の絞り込みまでを担わせ、研究者が実験検証に集中できる枠組みを示した。理論予測が難しい超伝導分野で、探索時間の短縮につながるかが注目される。

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