OpenUSDの登場で、Circleの事業モデルに改めて注目が集まっている。写真=Reve AI

Coinbaseが、新たなステーブルコイン構想「OpenUSD(OUSD)」の陣営に加わった。USDCの主要流通パートナーとしてCircleを支えてきた同社の動きは、市場に波紋を広げている。OpenUSDは発行・償還手数料を無料とし、準備資産の利息収益を流通パートナーに厚く配分するモデルを掲げており、発行体主導だった既存の収益構造に揺さぶりをかける可能性がある。

ブロックチェーンメディアのCryptoSlateが2日(現地時間)に報じたところによると、OpenUSDにはCoinbaseのほか、Visa、Mastercard、Stripe、BlackRock、Googleなど、金融・テクノロジー・暗号資産関連の140社超が参加している。

最大の特徴は収益配分の設計だ。OpenUSDは法人顧客から発行・償還手数料を徴収せず、準備資産から生じる利息収益の相当部分を流通パートナーに還元する方針を打ち出した。発行体が顧客資金を短期国債などで運用し、その果実を取り込む従来モデルに対し、流通プラットフォーム側がより大きな取り分を求め始めた格好だ。

Coinbaseの参加は象徴的な話にとどまらない。Coinbaseは1~3月期の報告書で、流通するUSDCの25%超に当たる平均約190億ドルが、同社のプロダクト上で保有されていたと公表した。

同社のレイヤー2ネットワーク「Base」も、同四半期の世界のオンチェーン・ステーブルコイン取引量の62%を占めた。Circleにとって最重要の流通パートナーが、競合モデルにも持ち分を確保した構図となる。

市場も敏感に反応した。OpenUSDコンソーシアムの発表当日、Circle株は約16%下落した。投資家の関心は、CircleとCoinbaseの関係に変化が生じるかどうかに向かった。

両社の収益配分契約は3年ごとに見直され、次回の満了は2026年8月とされる。2024年にCircleがCoinbaseへ支払った配分額は9億800万ドル。また、2025年のCoinbaseのステーブルコイン関連売上高は約13億5000万ドルで、通期売上高の約19%を占めた。

これに対し、Circleはすぐに防衛姿勢を鮮明にした。Circleのジェレミー・アレア最高経営責任者(CEO)はX(旧Twitter)で、「ステーブルコインはプラットフォームとネットワーク効果のビジネスであり、長期的には勝者総取りに近づく」と主張した。

さらにArtemisのデータを引用し、2026年1~3月期のUSDCのオンチェーン取引量は約30兆ドルに達し、主要ブロックチェーンにおけるドル建てステーブルコイン取引の80%を占めたと説明した。

アレア氏は、約10年かけて構築してきた統合インフラを企業連合が短期間で置き換えるのは難しいと強調した。USDCは主要金融市場、分散型金融(DeFi)プロトコル、グローバル決済事業者にまたがって深く組み込まれているという。

OpenUSDの無手数料方針についても、マーケティング上の訴求力はあるとしつつ、実際の市場ではより構造化された商業モデルが必要になると指摘した。

企業連合の実行力に懐疑的な見方もある。アレア氏は過去の大規模金融コンソーシアムの事例に触れ、「大企業コンソーシアムは調整が難しいだけでなく、スピードも遅い」と述べた。

また、準備資産の収益をすべて外部に配分すれば、グローバルでのライセンス取得やコンプライアンス対応、24時間体制の財務管理インフラに投じる資本が細るとも指摘した。

市場アナリストの見方も慎重だ。Ark Investのデジタル資産リサーチ責任者、ロレンツォ・バレンテ氏は、新規ステーブルコインが直面する「コールドスタート」の問題を挙げた。資本市場と暗号資産取引所の主要な取引ペアは、すでにUSDTとUSDCを中心に最適化されているという。

同氏は「競合関係にある500社規模の企業コンソーシアムが円滑に機能した前例はない」とし、意思決定が極端に遅くなる可能性があるとの見方を示した。

規制面の不確実性も残る。CircleとTetherは各国でライセンス取得と規制対応の実績を積み上げてきた一方、世界の主要カードネットワーク、資産運用会社、小売銀行が共同で関与する単一の発行体は、反トラスト規制の対象となる可能性がある。

創設メンバー間の利害も一枚岩ではない。Stripeはステーブルコインのインフラ企業Bridgeを買収しており、主要銀行は独自のトークン化預金システムを試験中だ。Rippleも別のステーブルコインを投入している。

今回の競争の焦点は、技術そのものから経済構造へと移った。顧客接点を握る流通企業が、自社の利用者基盤から生まれる準備資産収益の配分拡大を狙うなか、発行体中心のモデルは流通側からこれまでで最も強い挑戦を受けている。

Circleは今後、クロスチェーン転送プロトコル(CCTP)や機関投資家向けの組み込み型ウォレットなど、ソフトウェア層での付加価値を一段と拡大する必要に迫られそうだ。

アレア氏は「ステーブルコインは、インターネットが資金の保管と移動のインフラを変えるなかで、世界最大級の市場機会の一つだ。私たちはこれを強く信じており、Circleを創業した理由であり、最大の規制準拠型ステーブルコインを構築するために投資してきた理由でもある…」と述べた。

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