OpenStandardは6月30日、グローバルな資金移動向けステーブルコイン「OpenUSD」を発表した。最大の特徴は、準備金から生じる収益を保有者に直接還元するのではなく、流通・決済パートナーに配分する点にある。米国でステーブルコインの利回り提供を巡る規制論議が続く中、保有者向け報酬ではなく流通網の拡大に報いる設計を前面に打ち出した。
CryptoSlateは7月1日、このOpenUSDについて、保有者への収益還元よりも流通・決済ネットワークへの報酬に軸足を置いたモデルだと報じた。
OpenUSDでは、企業が手数料なしで発行・償還でき、供給量にも意図的な制限を設けない。一方、パートナーは小規模な管理手数料を除いた準備金収益の分配を受ける仕組みだ。
ただ、現時点で開示されている情報は限られる。流通量や償還履歴、準備金に関する開示、主要な価格集計の内訳は公表されておらず、ローンチは2026年後半を見込む。
それでも市場の関心を集めているのは、ステーブルコイン事業の主要な収益源である準備金収益を、誰に配分するのかを明確に打ち出したためだ。
OpenStandardはOpenUSDを共同インフラと位置付け、参加企業が利用量に応じて収益を得られるとしている。公表済みのパートナーには、Visa、Stripe、Mastercard、BlackRock、BNY、Google、Coinbase、Solana、Base、Aave、Ripple、Fireblocks、Shopify、DoorDashなど140社超が含まれる。
この仕組みが定着すれば、ステーブルコイン発行体の優位性は、単なる「発行力」から「流通網を握る交渉力」へ移る可能性がある。
比較対象として意識されるのはCircleだ。Circleの2025年年次報告書によると、同年売上高の96.0%は準備金収益が占めた。さらに、Coinbaseに関連する流通コストとして14億ドル(約2100億円)を計上している。Coinbaseも2024年年次報告書で、Circleから受け取るステーブルコイン収益はUSDC準備金から生じる日次収益に基づいて決まると明らかにしている。
OpenUSDは、こうした収益構造を前提にしつつ、それをより幅広いパートナー群に明示的に適用するモデルといえる。
もっとも、法的・運用面の詳細はなお不透明だ。OpenStandardは、準備金を米規制要件に沿って主要金融機関に保管すると説明しているが、法的な発行主体、準備金の運用主体、受託機関、償還相手先、準備金の構成については確定情報を開示していない。
これらは規制対応だけでなく、実際の導入可能性を左右する重要な論点になる。
規制環境もOpenUSDの戦略と密接に関わる。米上院銀行委員会の「デジタル資産市場明確化法」草案404条には、制限対象となる米国顧客に対し、決済型ステーブルコイン残高に連動した直接・間接の利子や収益の支払いを禁じる内容が盛り込まれた。
一方で、将来の規定次第では、実際の活動や取引に基づく報酬が認められる余地も残されている。
OpenUSDが狙うのはまさにこの点だ。保有者への利回り付与が規制対象となっても、決済事業者、取引所、ウォレット、マーケットプレイスが流通拡大や利用促進の対価として収益を得る仕組みであれば、異なる扱いを受ける可能性がある。
政策論争も割れている。ホワイトハウス経済諮問委員会は、収益型ステーブルコインの禁止は銀行融資の保護に大きく寄与しない一方、消費者の利便性だけを損なう可能性があるとみている。
これに対し、銀行政策研究所は、家計や企業が資金を移せば預金と貸出の減少につながり得ると主張する。OpenUSDは、こうした議論の焦点を保有者向け収益から流通・決済パートナー向け報酬へ移そうとする試みとも読める。
市場環境も見逃せない。DeFiLlamaの7月1日時点の集計によると、ステーブルコインの時価総額は約3114億ドル(約4兆6710億円)。このうちUSDTは約1844億ドル(約2兆7660億円)で59.2%のシェアを占め、USDCは約734億ドル(約1兆1010億円)だった。
取引規模でもUSDTが先行している。長期的には、OpenUSDがTetherの流動性や取引慣行に圧力をかける可能性もあるが、当面の比較対象としては、規制順守と透明性を打ち出す企業向けステーブルコインという点でUSDCに近い。
最終的な焦点は実利用にある。OpenUSDはパートナー主導のガバナンスと収益分配を掲げるが、誰が発行主体となるのか、準備金をどこで保管するのか、何を裏付け資産とするのか、どのチェーンで先行展開するのか、どのパートナーが実際に決済や送金で採用するのかが今後の見極め材料になる。
法令と細則が最終的に固まれば、保有者向け報酬とパートナー向け収益分配を切り分ける現在の戦略が、どこまで認められるのかも明らかになる見通しだ。