米ウィスコンシン州の核融合スタートアップRealta Fusionは、核融合反応で生じたエネルギーを直接電力に変換し、その電力で電球を点灯させることに成功した。実証装置「WHAM」を使った公開デモとして実施した。
TechCrunchが6月30日付で報じたところによると、同社は6月19日、WHAMで生成した電力により電球を点灯した。Realta Fusionは、核融合反応から直接電力を回収する方式を公開デモした民間企業としては初めてだとしている。
今回の実証のポイントは、従来想定されてきた核融合発電とは異なるアプローチにある。一般的な核融合発電は、反応で生じた熱で水を沸騰させ、蒸気タービンを回して発電する方式が有力視されてきた。これに対しRealta Fusionは、反応で生じる荷電粒子のエネルギーを直接電力に変換する方式を採った。
共同創業者兼CEOのキーアラン・ファーロング氏は、「核融合プラズマから直接電力を取り出せる」と述べ、今回のデモが技術の実現可能性を示すものだと強調した。
同社は商用炉で、重水素と三重水素を燃料に用いる計画だ。この反応では、総エネルギーの約20%が、電荷を持つヘリウム原子核であるアルファ粒子として放出される。Realta Fusionは炉の端部に自社開発の電力変換装置を接続し、アルファ粒子のエネルギーを電力へ直接変換したとしている。
その結果、約100V、数A規模の電流を得て、複数の電球を同時に点灯できたという。
同社はこの技術により、発電所内で消費する自家使用電力を大幅に抑えられるとみている。核融合発電所では、プラズマの維持や加熱に相当量の電力が必要になるためだ。直接電力変換の効率は約90%に達すると推定している。
これは、現在の原子力発電所で使われる蒸気タービン発電の効率がおよそ33%にとどまるのに比べて高い水準だという。
ファーロングCEOは、商用発電所では直接回収した電力が、プラズマ加熱に必要なエネルギーの相当部分を賄えるとの見通しも示した。「生み出した電力を実質的に再循環できる」とし、「この構造によって商用核融合発電所の総出力も20〜30%高まる」と説明した。
さらに同氏は、「電気的なフライホイールを回すのに近い効果だ」とも述べた。
核融合業界ではここ数年、技術開発の焦点が変わりつつある。2022年に米国立点火施設(NIF)が、投入エネルギーを上回る核融合エネルギーの獲得に成功して以降、関心は核融合反応の成立そのものから、商業化に向けた経済性の確保へと移っている。とりわけ、どれだけ効率よく電力を回収し、炉の運転に再利用できるかが競争力を左右する要素として浮上している。
同様の技術開発はRealta Fusionに限らない。OpenAIのサム・アルトマンCEOが出資する核融合スタートアップHelionも、直接電力変換を中核技術に据えている。ただ、公開デモの事例はまだないという。
資金調達も続いている。Realta Fusionは昨年、Future Ventures主導のシリーズAで3600万ドル(約54億円)を調達した。現在も新規投資の獲得を進めていることを明らかにしている。
今回のデモは、核融合反応の成立だけでなく、得られたエネルギーをどれだけ効率よく電力として取り出せるかという点で、新たなアプローチを示した事例といえそうだ。直接電力変換の商用化が実現するかどうかは、次世代の核融合発電の競争を左右する重要な論点になりそうだ。