科学技術情報通信部は6月30日、携帯電話の不正利用防止策の一環として、開通時に顔認証を導入すると発表した。7月6日から移動通信大手3社とMVNOの新規契約、番号ポータビリティー(MNP)に適用する。ただ、利用者は顔認証を使わず、当初から代替の本人確認手段を選べるため、政策の実効性を疑問視する声も出ている。
同日の政府ソウル庁舎でのブリーフィングでは、「携帯電話不正使用防止総合対策」を公表した。昨年8月に打ち出した政府全体のボイスフィッシング根絶対策の後続措置に当たる。科学技術情報通信部は、不正利用の類型ごとに対策を講じるとともに、摘発後の制裁強化にも重点を置いたとしている。
今回の対策の柱は、いわゆる「大砲携帯」と呼ばれる不正開通端末の流通抑制だ。7月6日から、移動通信大手3社とMVNOの店頭・非対面の両チャネルで、新規契約とMNPに顔認証を導入する。10月以降は制度やシステム面の補完を進める。
一方、同一事業者内での端末変更は、すでに本人確認を経ていることを踏まえ、当面は対象外とする。顔認証を選んだ利用者は、1回以上、最大3回まで認証を試行する。認証に失敗した場合は、行政安全部のモバイル身分証、または当日発行の住民登録謄本で本人確認を行ったうえで開通できる。
利用者は顔認証を試さず、最初から代替手段を選ぶことも可能だ。生体情報の提供を望まない場合、オンラインでもオフラインでも代替手段で契約できる。キム・ジュンモ科学技術情報通信部通信利用制度課長は、「移動通信大手3社とMVNOの対面・非対面のいずれでも、顔認証を経ずにモバイル身分証で開通できるよう適用を終えた」と述べた。
科学技術情報通信部は、代替手段を認めた背景として、個人情報保護委員会と国家人権委員会の勧告を挙げた。国家人権委員会は、生体認識情報は一度流出すると変更が難しいとして、明確な法的根拠と実質的な選択権の保障を求めていた。個人情報保護委員会も5月、顔認証の義務化に関して改善を勧告していた。
ただ、同部は顔認証を主要な本人確認手段として定着させる方針も示している。販売店が利用者の意思に反して形式的に顔認証を失敗扱いにしたり、代替手段へ誘導したりする行為を点検する。認証過程で発生するエラーコードやログを分析し、通常の失敗と意図的な回避を見分ける計画だ。平均を大きく上回る失敗率が確認されたり、不正開通が疑われたりする販売網は点検・取り締まりの対象とする。優良代理店には認定や表彰などのインセンティブを付与し、不振代理店には管理・監督を強化する。
同部は安全性も強調した。認証時の顔情報の原本は保存せず、照合直後に破棄する。送信過程も暗号化しており、事前のセキュリティー点検でも顔情報流出につながる脆弱性は見つからなかったとしている。
チェ・ウヒョク情報保護ネットワーク政策室長は、「顔認証は不正使用防止のための強力な本人確認システムだが、強制はできないため、代替手段を併用せざるを得ない」と説明した。そのうえで、「携帯電話の不正利用防止が最優先だ。国民の利便性に加え、代理店や非対面チャネルなど現場の受容性も考慮した」と述べた。
もっとも、任意運用である以上、効果が薄れるのではないかとの見方は根強い。顔認証が不正開通端末を防ぐ最も強力な手段であるなら、利用者がこれを回避できる仕組みは政策効果を弱めかねないためだ。逆に、モバイル身分証が顔認証に近い安全性を備えるのであれば、反発や論争を伴ってまで顔認証を前面に打ち出す必要があるのか、という指摘もある。業界関係者は「なぜ論争まで招いて今回の政策を出したのか理解しにくい。最初から複数の案を幅広く検討し、国民の懸念を減らすべきだった」と話した。
政府はこの日の説明で「段階的導入」との表現を使ったが、実際には適用範囲を順次広げるというより、施行後に法令やシステムを補完していく意味合いが強い。顔認証は7月6日から移動通信大手3社とMVNOの対面・非対面チャネルに一斉適用され、終了時期も設けない。10月以降に顔認証が義務化されたり、代替手段がなくなったりするわけでもない。チェ室長は「段階的施行という概念はあるが、全面施行という概念はない」と述べた。
今後の追加措置も示した。8月には金融業界の非対面での実名確認方式などを参考に、新たな代替手段を検討する。9月には住民登録謄本の真偽確認と履歴管理を本人確認手続きに連携する。顔認証の法的根拠をより明確にする電気通信事業法施行令の改正案は10月に取りまとめる方針だ。11月からは、利用者が別途申し込む必要があった加入制限サービスも、携帯電話契約時に標準提供する。このサービスは利用者の希望でいつでも解約できる。
ただし、科学技術情報通信部は今回の導入で不正開通端末やボイスフィッシング被害がどの程度減るのか、目標値や試算値は示していない。同部は、不正開通端末の摘発主体は警察であり、関連統計を事前に予測するのは難しいと説明した。6カ月の試行運用を経ながら、効果を示す数値がないまま本格導入に踏み切る格好となった。
試行運用の結果についても、開示は限定的だった。科学技術情報通信部は昨年12月から今年6月まで、308の先導代理店を中心に顔認証システムを点検したが、この期間の顔認証利用率や、対面・非対面チャネル別の認証成功率は公表しなかった。ナム・ソク通信政策官は「試行運用は一種の任意手続きだったため、正確な比率を示しにくい面がある」と述べた。
なお、外国人名義を使った不正開通への対応は今後の課題として残る。科学技術情報通信部は、外国人登録証の写真の真偽確認体制を今年下期に導入することを目指す。チェ室長は「今年下期ごろには外国人登録証の電算化作業が進む見込みだ。旅券は来年になると把握している。法務部と協力し、準備が整い次第進める」と説明した。それまでは、外国人の携帯電話契約を1人1回線に制限し、追加回線の開通時には疎明を求める方式で対応する。
また、融資や高額アルバイトを餌に、本人が自ら契約した端末を第三者に渡す、いわゆる「内救済携帯」も死角として残る。実名の契約者本人が正規の本人確認手続きを通過するため、顔認証やモバイル身分証でも見分けにくいからだ。これに対し、科学技術情報通信部は通信事業者に違法性や処罰の可能性に関する告知義務を課す方針を示した。高額端末の分割払いによる開通制限も進める。法人契約では、実使用者の登録制と、180日以内に4回線を原則とする多回線の総量規制を導入する。
不正開通が多数発生した通信事業者に対しては、是正命令を経ずに事業停止を科す「ワンストライクアウト」も推進する。故意または重大な過失が確認された代理店は契約を解除し、販売店については事前承諾を撤回できるようにする。
通信業界は政府方針に沿って対応を進める構えだ。同日、韓国通信事業者連合会(KTOA)、韓国MVNO事業者協会、全国移動通信流通協会(KMDA)は共同声明を発表し、「政府が示した段階的な多重認証導入案が現場で支障なく実施されるよう、継続的な広報・教育と関連システムの補完に積極的に取り組む」と表明した。