国際決済銀行(BIS)は、人工知能(AI)を巡る巨額投資が金融市場全体の新たなリスク要因になり得ると警告した。AIインフラ投資が期待した収益を生み出せなければ、市場全体にショックが広がり、ビットコイン(BTC)も当面はリスク資産として売られる可能性があるという。
CryptoSlateが29日(現地時間)に伝えたところによると、BISは年次経済報告書で、2025〜2026年に5大ハイパースケーラーのAI関連設備投資が1兆ドル(約150兆円)を超えるとの見通しを示した。
BISは、足元のAI投資競争が将来の収益で正当化できる水準を上回る恐れがあると指摘した。想定通りの収益が実現しなければ資金調達が急減速し、AI投資ブームが長期停滞に転じて、金融市場全体に連鎖的な影響を及ぼしかねないとしている。
報告書が問題視したのは、AIの長期的な成長性そのものより、むしろ現在の資金調達構造だ。GoogleやOpenAI、Anthropicなど主要AI企業は、安定した収益性やAIインフラの償却ペースが十分に見極められていない段階でも、巨額の資金を投じているとした。
投資資金は半導体、クラウド、データセンター、電力、ネットワーク機器に集中し、これまでハイテク株高を支えてきた。一方で、競争の過熱は過剰設備や採算悪化につながる可能性があるとみている。
BISは今回の局面を、過去の運河、鉄道、電力、インターネットを巡る投資ブームになぞらえた。技術そのものは経済構造を変えたが、資金流入が過度に進んだ結果、その後に急速な投資縮小と市場調整が起きたという。
報告書は、現在のAI投資ブームについても、投資規模と拡大スピード、生産性向上への強い期待という点で、過去の事例と共通点が多いと評価した。
今回は資金調達の仕組みが一段と複雑になっている点もリスクとして挙げた。AI投資の初期段階では大手テック企業の潤沢な手元資金が主な原資だったが、現在の1兆ドル規模の投資では、負債を含む多様な調達手段が併用されているという。
BISは、社債やプライベートクレジット、リース金融に加え、データセンター建設、エネルギー契約、サプライチェーン契約が複雑に絡み合い、表面上の見た目以上に金融システムの連関リスクが高まっていると分析した。
こうした構造的リスクには暗号資産業界も注目している。Onramp Bitcoinは、AI産業内で資金が循環する構図が形成されていると分析した。
具体的には、NvidiaがOpenAIのようなAI企業に出資し、AI企業はOracleやCoreWeaveのクラウドを利用し、そのクラウド事業者が再びNvidiaのAI半導体を購入する流れが繰り返されていると説明した。
その結果、同じ資金が投資、売上高、資金調達の各局面に同時に反映され、実需以上に市場が大きく成長しているように見える可能性があると指摘した。
AI需要が拡大し続ける限り、この構造は維持される。しかし需要が期待に届かなければ、サプライチェーン全体に衝撃が広がる恐れがある。
半導体サプライヤーは受注減に直面し、データセンター事業者は稼働率の低下を迫られる可能性がある。プライベートクレジット市場ではテック企業向け融資の不良化リスクが高まり、銀行もノンバンク向けエクスポージャーの見直しを迫られる可能性がある。
ビットコイン市場が注視しているのも、この波及経路だ。BISは、AI投資の鈍化が本格化すれば、まずハイテク株が下落し、その後クレジットスプレッドが拡大して市場全体の資金調達環境が悪化する可能性があるとみている。
その過程で損失を抱えた投資家が、暗号資産を含む流動性の高い資産を売却する展開も想定される。ビットコインがAI産業と直接結び付いていなくても、同じリスク資産ポートフォリオに組み込まれている限り、当初は連れ安になりやすいとの見方だ。
実際、ビットコインは過去のリスク回避局面でも安全資産として機能しなかった例がある。直近でも、韓国総合株価指数(KOSPI)の急落局面でビットコインは6万3000ドル(約945万円)を下回り、希少性よりも流動性や投資家心理の影響を強く受ける場面があった。
もっとも、その後の展開は政策対応によって変わる可能性がある。AI投資の鈍化が一部テック企業にとどまれば、株価調整の範囲で収束する可能性もあるが、BISは今回のAI投資ブームが企業投資、雇用、家計資産、信用市場にまで影響する規模に拡大したとみている。
さらに、インフレが長引けば中央銀行の利下げ余地が限られ、リスク資産には追加の重荷となり得るとした。
一方、信用ショック拡大後に当局が金融環境を再び緩和すれば、ビットコインが別の局面に入る可能性もある。BitMEX共同創業者のアーサー・ヘイズは、当局が再び流動性を供給すれば、ビットコインは大きく上昇し得ると主張してきた。
ただ、そのシナリオでも初期の急落を先に耐える必要がある可能性がある。AI投資鈍化に対するビットコインの初期反応は、リスクオフに傾きやすいとの見方が出ている。