写真=TeslaのHW3車載コンピューター

Teslaは、HW3搭載車向けに「FSD v14 Lite」の配信を開始した。2025年初めからFSD v12.6にとどまっていたHW3車両向けでは初の大規模アップデートとなる。ただし、今回の更新でも非監督型の自動運転には対応しておらず、位置付けは従来通りレベル2の運転支援にとどまる。

電気自動車メディアのElectrekが6月29日付で報じた。対象はまず早期アクセスプログラムの利用者。TeslaでAI部門を統括するアショク・エルスワミ氏はX(旧Twitter)への投稿で、「FSD v14 Lite」をTesla社内でHW3を指す「AI3」の早期アクセス顧客向けに配信していると明らかにした。今回のビルドのファームウェア版は「2026.20.5.1」だという。

今回の更新のポイントは、HW4向けFSD v14シリーズの走行モデルをHW3向けに最適化した点にある。エルスワミ氏によると、HW4版v14の走行挙動をHW3のカメラ構成と演算性能に合わせて調整したバージョンで、都市部走行では目的地設定や速度プロファイルの支援を含み、安全性の向上も図ったとしている。

Teslaはリリースノートで、HW4向けv14の知能をHW3へ移植し、一部の改良を旧世代のコンピューターでも活用できるようにしたと説明した。強化学習やオフラインモデルに基づく改善の一部を反映し、ナビゲーション処理のほか、車線の合流・分岐、歩行者への対応性能を高めたという。駐車、出庫、後退の機能も追加した。

もっとも、今回の更新でHW3の根本的な制約が解消されたわけではない。名称が示す通り「監督型」のFSD v14 Liteであり、ドライバーが常時注意を払い、必要に応じて即時介入することを前提とするレベル2の運転支援システムである点に変わりはない。HW3車両が非監督型の自動運転に対応したわけではない。

この点は、Tesla自身がHW3の性能限界を事実上認めたことで、いっそう注目を集めている。Teslaは2019年以降に販売した数百万台について、完全自動運転に必要なハードウェアをすべて搭載していると訴求し、FSDパッケージを最大1万5000ドルで販売してきた。だが、イーロン・マスク氏は2026年1~3月期の決算説明会で、HW3車両には非監督型FSDを実行する能力が「単純にない」と述べた。HW3チップのメモリ帯域幅は、HW4のおよそ8分の1とされる。

その後Teslaは、HW3のコンピューターとカメラを交換するための専用マイクロファクトリー構築の可能性に言及したほか、過去のFSD契約文言にも後から「監督型」の表現を加えた。今回のv14 Liteは、4月にHW3ユーザーの反発を和らげる目的で予告されていた措置で、6月としていた目標時期の終盤に実際の配信が始まった格好だ。

今後の焦点は、一般ユーザー向けの展開と補償問題に移っている。エルスワミ氏は、利用者の反応を踏まえながら、今後数週間で配信対象をさらに広げる考えを示した。FSD v14はすでに欧州とオーストラリアでも提供されており、これらの地域のHW3車両に適用が広がる可能性もある。

一方で、法的リスクも増している。オランダでは、HW3を巡る約束不履行を問題視する集団請求の参加者が約7000人規模に増え、正式な法的対応も進んでいるという。Teslaにとっては、約400万台を対象とするコンピューター交換、あるいはオーナー補償の負担が引き続き大きな論点となる。今回の更新は走行性能の改善という意味では前進だが、HW3購入者が費用を支払って期待した非監督型自動運転とはなお隔たりがあり、この点が今後も主要な争点となりそうだ。

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