Strategyが、必要に応じて保有するビットコインを売却できる方針を打ち出した。これを受け、ビットコインに批判的な立場で知られるピーター・シフ氏は、価格下落が追加売却を招く「デススパイラル」に陥る可能性があると警鐘を鳴らした。一方、同社はBTCの売却を迫られている状況ではないと説明している。
ブロックチェーンメディアのU.Todayによると、Strategyは6月29日、ドル準備金の拡充や配当・利払い、自社証券の買い戻しなどを目的に、必要に応じて保有ビットコインを売却できる「Bitcoin Monetization Program」を公表した。
今回の発表で注目されているのは、StrategyがBTCを一方的に積み増すだけでなく、必要に応じてドル流動性の確保手段として活用できることを明確にした点だ。企業として世界最大級のBTC保有で知られる同社の資金運用方針に、新たな選択肢が加わった格好だ。
同社によると、ドル準備金の確保に向けて最大12億5000万ドル(約1875億円)を調達できるほか、証券の買い戻しに最大10億ドル(約1500億円)、クラスA普通株の自社株買いに最大10億ドル(約1500億円)を充てる計画を盛り込んだ。
これに対し、シフ氏はX(旧Twitter)への投稿で「MSTRはもはやビットコインの売り手だ」と主張した。MSTRはStrategyのナスダック上場ティッカー。同氏は、同社がドル準備金の積み増し、優先株配当の支払い、負債利払い、さらに優先株と普通株の買い戻し原資の確保に向けてBTCを売却し得ると指摘した。
市場への影響についても懸念を示した。シフ氏は、今回の発表が最大32億5000万ドル(約4875億円)規模の売却余地を市場に意識させる内容だとし、BTC価格を6万ドルと仮定すれば約5万4000BTCに相当する規模になると試算した。
こうした見方が浮上している背景には、Strategyの金融商品STRCの価格が足元で100ドルを下回っていることもある。Strategyは7月1日から、STRCの定期配当率を年12%に引き上げるとしており、市場ではBTC保有戦略と資本市場での資金調達構造が同時に圧力を受ける可能性に関心が集まっている。
もっとも、同社は過度な懸念の火消しも図っている。StrategyのCFOであるアンドリュー・カン氏は、同社がBTC売却を強いられる状況にはないと説明した。現在、約25億5000万ドル(約3825億円)のドル準備金を保有しており、今回のプログラムが直ちに大規模なBTC売却を意味するものではないとしている。
市場が注目しているのは、実際に売却が行われるかどうかだけではない。売却の可能性が明示されたこと自体が投資家心理にどう影響するかが焦点だ。Strategyが今後、BTCを単なる長期保有資産ではなく流動性確保の手段として本格活用し始めれば、企業のBTC保有戦略に対する市場の見方が変わる可能性がある。
一方で、十分なドル準備金を背景に活用が限定的にとどまれば、市場の懸念は行き過ぎだったとの評価につながる余地もある。足元でBTC相場は上昇基調を維持しているが、市場はStrategyが示した最大32億5000万ドル規模の資金運用計画が実際のBTC売却につながるのか、またSTRCや株主還元策にどのような影響を及ぼすのかを見極めようとしている。