米国運輸省は、自動運転専用車を対象に、ブレーキペダルなど人の運転を前提とした装備義務を見直す規則改正案を進めている。実現すれば、ハンドルやペダルを備えない車両を開発するテスラやZooxにとって、実用化に向けた規制上のハードルが下がる可能性がある。米TechCrunchが25日(現地時間)に報じた。
改正案は、連邦自動車安全基準(FMVSS)のうち、人が直接運転することを前提に設けられた部品や設計要件を、自動運転専用車には適用しない内容となる見通しだ。
対象はブレーキペダルにとどまらず、既存の規制体系で求められてきた一部装置や設計基準全般に広がる可能性がある。米国運輸省は30日間のパブリックコメントを実施した上で、承認の可否を判断する予定だ。
現行のFMVSSでは、必須部品を備えない自動運転車を開発する場合、企業は連邦政府に個別の免除申請を行う必要がある。免除が認められても、公道投入できる車両台数は制限される。このため、ブレーキペダルなどの装備義務が外れれば、企業は例外承認の手続きを経ずに、市場投入を早めやすくなる。
米道路交通安全局(NHTSA)は、こうした見直しが自動運転車の普及を後押しする可能性があるとみている。
ジョナサン・モリソンNHTSA局長は声明で、車両技術はFordの「モデルT」以来で最大の技術革新の入り口にあると指摘した。その上で、米国が主導権を握るには、規制体系の再設計が必要だと述べた。
また、ショーン・ダフィー長官の下で不要な障壁は取り除く一方、重要な安全要件は強化し、自動運転車を開発する企業の安全責任も引き続き問う方針を示した。
今回の動きは、トランプ政権が相次いで打ち出している自動運転車の規制緩和の流れに沿うものだ。
昨年末にはNHTSAが、フロントガラスのワイパーや曇り取り装置、タイヤ表示に関する一部基準の見直し案を提示した。自動運転専用車について、人の運転を前提とした要件を外す方向で制度を見直す内容だった。
バイデン政権時代にも、同様の方向で規制整備が進められた。NHTSAは当時、ハンドルのない自動運転車の運行を認める規則を提案し、最終的に確定している。
今回は、これに加えてブレーキペダルも基準の対象外とする方向だ。
直接的な恩恵を受ける企業の一つとして、テスラが挙がっている。テスラはここ数年、ハンドルもペダルも備えない2人乗り車両「Cybercab」を開発してきた。
ただ、テスラはこれらの操作装置を求めるFMVSSについて、現時点で免除申請を行っていない。イーロン・マスクは、規制当局の承認が得られれば、この車両を全米に展開する考えを繰り返し示してきた。
テスラは別途、テキサス州オースティンで小規模なロボタクシーサービスを約1年間運営してきた。サービス開始当初は前席に安全運転者を乗せていたが、その後は段階的に外し、車両が監督なしで走行する形に切り替えた。
一方でテスラは、衝突後や障害物回避が必要となるまれな場面では、遠隔オペレーターが低速で車両を動かしたり監視したりする場合があることをNHTSAに認めている。
Amazon傘下のZooxも、今回の規制改正の影響を受ける企業だ。Zooxは昨年、自社設計の専用ロボタクシーの実証運行に向けてFMVSSの免除を申請し、承認を得た。
その後、商業運行に向けた追加免除も改めて申請しており、現在は判断待ちとなっている。
これに対し、Waymoのように一般車両を改造してロボタクシーに活用する企業は事情が異なる。Jaguar I-Paceのように既存の手動操作装置を残した車両を使うため、必要台数のロボタクシーをすでに配備できる。
このため、今回の提案は既存車両の改造型よりも、自動運転専用車を新規設計する企業により大きな影響を与える可能性がある。
今後の焦点は、パブリックコメントを経て米国運輸省が実際に規則改正を確定するかどうかにある。
改正案が成立すれば、自動運転専用車は免除中心の仕組みから離れ、より一般的な承認手続きの枠組みで公道投入しやすくなる。テスラのCybercabやZooxの専用ロボタクシーの商業化日程も、この規制変更の影響を直接受ける見通しだ。