OpenAIが、新規株式公開(IPO)の時期を2027年に先送りする方向で検討に入った。1兆ドルの企業価値を視野に入れる一方、巨額のコンピュートインフラ負担や上場企業としての開示体制整備も課題となっている。こうした中、Anthropicは米証券取引委員会(SEC)にS-1を提出しており、先行上場の可能性が高まっている。
26日付のCryptopolitanなど海外主要メディアによると、OpenAI経営陣は当初取り沙汰されていた2026年末ではなく、2027年の上場を有力な選択肢として検討している。
最大の論点は企業価値だ。社内では、2027年まで待って1兆ドル(約150兆円)の評価を目指す案と、2026年末にそれを下回る評価で先に上場する案が併せて議論されてきた。ただ、サム・アルトマンCEOは1兆ドル目標を維持する姿勢を崩しておらず、セラ・フライアーCFOも2027年への先送りを支持してきたという。
先送りを検討する背景には、資金負担と開示対応がある。OpenAIは2030年までに6000億ドル(約90兆円)規模のコンピュートインフラ関連契約を抱えており、資金流出も大きい。あわせて、上場企業並みの報告義務に対応できる体制をどこまで整えられるかも重要な判断材料になっている。
市場環境も無視できない。OpenAIの直近の未公開株投資ラウンドでの企業価値は約8500億ドル(約127兆5000億円)だった。上場時に1兆ドル評価を実現するには、投資家の強い需要に加え、売上拡大も求められる。ただ、最近のSpaceX株の値動きは、高い評価を伴う大型テックIPOに対する市場の慎重姿勢を映している。
SpaceXは750億ドル(約11兆2500億円)規模の株式売買で、1株135ドル(約2万250円)で取引された。その後は一時225ドル(約3万3750円)を超え、時価総額は2兆ドル(約300兆円)を上回ったが、上昇基調は定着しなかった。25日時点では高値から約25〜30%下落し、153ドル前後(約2万2950円)で取引された。こうした動きを受け、市場参加者は大型生成AI企業のIPO需要を改めて見極めようとしている。
銀行業界では、OpenAIとAnthropicのどちらが先に上場するかが、新たな生成AI IPO市場の基準を形作るとの見方が出ている。一方でOpenAIは、より低い企業価値で先に上場する選択肢を事実上狭めた。アルトマンCEOが経営陣に対し、1兆ドルを下回る評価は受け入れない考えを示したことで、未公開のまま資金調達を続け、市況の改善を待つ方向に傾いている。
上場問題とは別に、OpenAIは次世代モデルの公開方法でも制約を受ける見通しだ。米ホワイトハウスは25日、GPT-5.6を広範に配布する前に、政府が承認した少数のパートナーへ先行提供するよう要請した。国家サイバー局長室と科学技術政策室がこの要請に関与したという。
アルトマンCEOは24日の社内Q&Aで、プレビュー期間中は政府が顧客ごとにアクセスを承認すると社員に説明した。別のメモでは、初期プレビュー開始後の数日以内に公開範囲を広げたい考えも示した。全面的な海外アクセス禁止ではなく、企業顧客を個別に承認する方式を採る点が特徴だ。
この措置は、Anthropicに対するこれまでの規制運用とも一部共通する。ホワイトハウスは先に商務省の輸出管理命令を通じて、AnthropicのClaude MythosとFable 5へのアクセスを制限し、Anthropicは両モデルを無効化する必要があった。一方、GPT-5.6には、より限定的な承認プロセスが適用された。関連して、ハワード・ラトニック商務長官はアルトマンCEOと直接協議し、政府内の関係部局で試験と承認が実施されたか確認を進めようとしたと伝えられている。
こうした中、AnthropicはOpenAIに先んじて株式市場に入る可能性を強めている。Anthropicは6月1日、SECに非公開でS-1を提出し、2026年10月のNasdaq上場を目標に据えた。目標企業価値は9650億ドル(約144兆7500億円)。Goldman Sachs、JPMorgan、Morgan Stanleyが共同主幹事を務める。
政治面の不確実性も一部後退した。ドナルド・トランプ米大統領は19日、Anthropicについて、もはや国家安全保障上の脅威とは見なしていないと述べた。OpenAIが実際に2027年へ先送りした場合、Anthropicが先に上場し、生成AI IPO市場の基準銘柄になる可能性は一段と高まる。
Anthropicの直近の競争指標にも市場の関心が集まっている。過去30日ベースでは、Polymarketで「最強モデルとなる可能性」が94.8%と織り込まれ、2028年には損益分岐点到達が見込まれている。一方、OpenAIには2028年に740億ドル(約11兆1000億円)の損失見通しが示された。上場時期、企業価値、モデル公開を巡る規制が交錯する中、両社の競争は資本市場と政策領域の双方へ広がっている。