Unconventional AIは、AI推論時の消費電力を大幅に削減できる新たな計算アーキテクチャを公開した。長期的には、従来のAIシステムに比べて消費電力を最大1000分の1に抑えることを目指す。
米TechCrunchが25日付で報じた。Unconventional AIはあわせて、同社初のAIモデルとなる画像生成AI「Un-0」と関連論文も公開した。オシレーターをベースとする新しいコンピューティングアーキテクチャにより、既存の拡散モデルに近い性能を実現できるとしている。
今回の発表で中核となるのは、画像生成モデルそのものよりも、その背後にある計算方式だ。Un-0はStable DiffusionやOpenAIの「GPT Image 1」に近い画像生成を目標としつつ、一般的なGPUと大規模ニューラルネットワーク計算ではなく、オシレーターベースの構造を採用した点を特徴としている。
同社は、このアーキテクチャによって、長期的にはAI推論に伴う電力消費を従来比で最大1000分の1まで削減できる可能性があるとみている。
もっとも、現時点で示されたのは実際の半導体ではなく、ソフトウェアシミュレーションの結果だ。研究チームは新アーキテクチャをソフトウェア環境で実装し、画像生成モデルを構築した。性能については、最新の拡散モデルに匹敵すると同社は説明している。今後は実チップの設計を公開した上で、専用AI半導体の開発を進める方針だ。
ナビン・ラオCEOは今回の公開について、「新しい種類のコンピュータにとっての『ハロー・ワールド』だ」と位置付けた。今後1年以内に追加の技術開発成果を公表する予定で、現段階では可能性を示すフェーズにあるものの、最終的には実ハードウェアの実装につなげたい考えを示した。
事業戦略はチップ販売にとどまらない。自社設計のチップで新たなAIシステムを構築し、それを基盤とするAI推論サービスのインフラ事業へ広げる構想だ。利用者は既存のAIサービスと同様にプロンプトを入力して結果を得る一方、内部では大幅に少ない電力で同等の処理を実現することを目指す。
同社は、AI産業における最大のボトルネックとしてエネルギー問題を挙げる。従業員数は50人未満だが、ラオ氏は企業規模よりも、AIの普及に必要な電力の確保こそが大きな課題だと強調した。「今後数年にわたり、AIの発展を制約する最も根本的な要因はエネルギーだ」とし、計算効率の革新が次世代AIの競争力を左右するとの認識を示した。
業界では、この技術が実際の半導体として実装可能かどうかに注目が集まっている。シミュレーションで確認した性能と電力効率を実チップでも再現できれば、AIデータセンターの消費電力を大きく引き下げる新たな計算アーキテクチャとして定着する可能性がある。一方で、ハードウェアの量産やエコシステムの構築には相応の時間がかかるとみられ、今後公開されるチップ設計や製品開発の進展が焦点となる。