NaverがAI検索の強化を追い風に、韓国の検索市場でシェアを持ち直している。一方で、ニュース消費の入口はポータルのトップ画面や検索から、YouTubeのレコメンドアルゴリズムへと移りつつある。検索はAIで下支えし、ニュース流通は動画プラットフォーム主導へ向かう構図が鮮明になってきた。
市場調査会社インターネットトレンドとNaverによると、AIタブのベータ版提供開始後、Naverの平均検索シェアは66.34%となり、開始前の63.82%から2.52ポイント上昇した。先月24日には81.34%まで急伸し、80%台に乗せた。
生成AIの普及でポータル検索の需要が縮小するとの見方もあったが、足元の動きはこれと異なる。AIタブを独立したサービスとして打ち出しつつ、既存の検索基盤とショッピング、プレイス、予約などの生活関連サービスを密接に連携させたことが奏功したとみられる。
同社は、利用者がAIの回答を確認するだけでなく、購買や予約、来店といった行動までつなげられるよう、検索の役割を広げたとしている。
◆AIタブを軸に検索防衛を進めるNaver
AIタブは、検索結果を一覧表示する従来型ではなく、対話しながら情報を探せる点を前面に打ち出した。Naver Plusメンバーシップ会員向けにベータ提供を始めてから1カ月で、月間アクティブユーザー数(MAU)は300万人を超えた。
ショッピングとプレイス予約分野のクリック率(CTR)は平均25%前後で、回答に対する肯定的なフィードバック比率は71%だった。
Naverは25日、AIタブの正式提供を全ユーザー向けに開始した。7月21日からはAIブリーフィング枠に広告を導入し、収益化にも乗り出す。
検索シェアの拡大と収益性の強化を同時に狙う構えで、AIブリーフィングの適用範囲も年末までに全検索クエリの約40%へ広げる方針だ。
同社はAI検索を既存検索の代替ではなく、利用時間を伸ばすための補完的な導線と位置付ける。ChatGPT、Gemini、Claudeなどの生成AIで一次回答を得た後、最新情報や韓国固有の文脈、購入や予約の可否をポータルで再確認する利用フローを取り込む狙いだ。
こうした戦略の裏付けとして、同社はプラットフォーム内に約2000万人のクリエイターを擁し、年間6億3000万件超のコンテンツが生み出されている点を挙げる。
ローカル、ショッピング、金融、健康など、韓国の生活者に密着した情報も蓄積しており、海外AIサービスやグローバル検索エンジンでは短期間で代替しにくい領域だとみている。昨年からは、今後3年間で3万件規模の新規ナレッジコンテンツ構築に向けた協約も進めている。
◆ニュース消費は「検索・選択型」から「レコメンド型」へ
検索市場でNaverが持ち直しを見せる一方、ニュース流通では別の変化が進む。YouTubeが単なる動画プラットフォームを超え、ニュース消費の主要なゲートウェイとして定着しつつあるためだ。
韓国言論振興財団の「2025言論受容者調査」によると、昨年7〜9月に19歳以上の男女6000人を対象に実施した調査では、オンライン動画プラットフォームを通じてニュースを利用したとの回答は30.0%だった。前年の18.4%から大きく伸びた。
ロイター・ジャーナリズム研究所の「Digital News Report 2026」でも、韓国のYouTubeニュース利用率は49%と、対象48カ国平均の31%を大きく上回った。一方、ポータルニュース利用率は66.5%で、関連調査では最低水準を記録した。
変化の核心は、ニュース消費の方式そのものにある。従来のポータル経由のニュース利用は、ユーザーが検索するか、ポータルのメイン画面で記事を選ぶ「検索・選択型」が中心だった。
これに対し、YouTubeのホーム画面やショート動画のレコメンドシステムでは、ユーザーの明確な意図とは無関係にニュースコンテンツが表示される「レコメンド型」が急速に広がっている。ニュースとの最初の接点が、ポータルのトップ画面からYouTubeの推薦フィードへ移っている格好だ。
この変化はメディア各社の戦略にも影響を及ぼしている。YouTubeチャンネル、ショート動画、ライブ配信といった動画プラットフォーム対応が、ポータルでの露出最適化とは別の重要な軸として浮上した。
一部メディアでは、自社サイトへのトラフィックよりも、YouTubeの再生回数や登録者数を主要KPIに据える動きも出ている。ただ、YouTubeへの依存度が高まるほど、アルゴリズム変更によるリーチの急変や、刺激の強いコンテンツ、偽情報や操作された情報の拡散リスクが高まるとの懸念もある。
YouTubeはニュースを直接生産しない一方で、流通過程を通じて世論形成に影響を与える。プラットフォームの責任や透明性を巡る議論も本格化している。
放送メディア通信委員会の内外では、プラットフォーム中心のニュース消費拡大に対応した制度整備の必要性が取り沙汰されている。
キム・ジョンチョル放送メディア通信委員長は最近の記者懇談会で、「以前はメディア企業がニュースを生産し、流通まで主導していたが、いまはプラットフォームがニュースへのアクセス経路を事実上決める時代だ」と述べた。その上で、「変化したメディア環境に見合った社会的議論が必要だ」と指摘した。
もっとも、従来の放送規制の枠組みをプラットフォームにそのまま当てはめることには慎重論も根強い。新たなルール設計が今後の課題として残る。
韓国のプラットフォーム市場は、検索、ニュース、コマース、コンテンツ流通を単一のポータルが握る構造から、機能ごとに主導権が分かれる方向へ変わり始めている。NaverはAI検索と生活関連データで検索需要を引き留め、YouTubeはレコメンドアルゴリズムでニュース消費時間を取り込む構図だ。
業界関係者は「検索シェアの上昇と、ポータルがメディアプラットフォームとして影響力を維持することは、もはや同義ではない」と指摘する。「利用者はすでに、情報確認とニュース消費を別々のプラットフォームで使い分けている。この分離は今後さらに明確になる」との見方を示した。