米光学・写真機器メーカーのPolaroidが、AI向けデータセンターの水消費に焦点を当てた広告を打ち出した。AIそのものを否定するのではなく、データセンターが環境に及ぼす負荷を問い直しながら、「アナログ」体験の価値を訴える狙いだ。
Business Insiderが24日(現地時間)に報じたところによると、Polaroidは米ニューヨーク・ブルックリンのコニーアイランドの海岸に、「Before data centers drink all the water, dive in(データセンターが水を飲み干す前に海へ飛び込め)」と記した大型看板を設置した。
この広告は、新型インスタントカメラ「Go Generation 3」の発売に合わせたグローバル施策「Best Summer Ever is Analog」の一環。PolaroidはAIという言葉を前面には出していないものの、AIサービス拡大を支えるデータセンターを事実上の批判対象としている。
同社は23日、Instagramでも同様のメッセージを発信した。「当たり前だと思っていたものを、二度と楽しめなくなる日が来るかもしれない」としたうえで、「少しふざけた表現ではあるが、メッセージは明確だ」と説明した。さらに、泳ぐことや散歩、美しくシンプルで荒削りなアナログの瞬間を楽しんでほしいと呼びかけ、デジタルよりも現実の体験に目を向ける姿勢を示した。
今回の施策は、AI産業が消費する膨大な水資源をマーケティングの前面に据えた点で注目される。データセンターはサーバー冷却の過程で直接水を使うほか、電力の生産段階でも間接的に相当量の水を消費する。
米国では、一部の大規模データセンターについて、1日当たりの許可水使用量が約4万9000人分の平均的な生活用水使用量を上回るとする調査もある。
一方、Polaroidはデジタル技術そのものに反対しているわけではないと説明する。クリエイティブディレクターのパトリシア・バレラ氏は、「これはテクノロジーと私たちの関係を考え直そうという挑発的なメッセージだが、当社は反デジタル企業ではない」と述べた。そのうえで、「私たちは人間の側に立っており、それを守らなければ何を失うかも分かっている」と語った。
データセンターの水消費を巡る論争は、AI業界全体に広がっている。OpenAIのサム・アルトマンCEOは年初、ChatGPTの利用に膨大な水が必要だとの指摘について、「まったくばかげている」と反論した。過去に一部施設で蒸発式冷却を採用したことはあるものの、現在は状況が異なり、オンラインで拡散している過度な水消費の主張は事実と違うと説明している。
NVIDIAも、水消費の削減に向けたデータセンター技術の開発を進めている。最近では、より高温環境でも安定稼働できる液体冷却システムを公開した。データセンター冷却・インフラ統括のアリ・ヘイダリ氏は、「大規模な電力消費を減らし、水の使用も事実上ほぼ不要にした」と説明した。
Polaroidの今回の広告は、単なる製品PRにとどまらず、AI拡大に伴う環境負荷を消費者に意識させる事例として受け止められている。他方でAI企業は、冷却技術の高度化やインフラ効率の改善によって水消費を継続的に抑えていると強調しており、データセンターの環境影響を巡る議論は今後も続きそうだ。