米EVスタートアップのSlateは、年内投入予定の電動ピックアップトラックで、バッテリーを従来検討していた三元系(NMC)からリン酸鉄リチウム(LFP)に切り替えた。供給元もSK OnからGotionに変更し、コスト競争力の確保と生産効率の改善を図る。車両の基本価格は2万4950ドルで、航続距離は205マイル(約330km)となる。
EV専門メディアのInsideEVsが24日(現地時間)に報じた。これによると、Slateは昨年の公開時に検討していたNMCではなく、Gotionが米イリノイ州工場で生産するLFPバッテリーパックを量産車に採用する。
背景には、コストと供給体制の両面で環境が変化したことがある。Gotionの生産拠点は、Slateのインディアナ州の組立工場に近く、物流コストの圧縮と生産効率の向上が見込めるという。
Slateの車両部門社長クリス・バーマン氏は、「2022年の開発初期には、米国で選択肢となるLFPバッテリーは多くなかった」と説明した。当時は、連邦EV補助金のバッテリー原産地要件を満たしにくいうえ、生産能力も十分ではなかったという。SlateはGotionとの協議を続けてきたが、米連邦EV税額控除の要件を踏まえ、別の電池構成を検討せざるを得なかったとも明らかにした。
その後、米議会がいわゆる「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」を可決し、最大7500ドルのEV税額控除が廃止されたことで、前提条件は変わった。バーマン氏は「LFPの供給環境は以前より大きく改善した。制度変更によって、バッテリー選択の幅も広がった」と述べた。
税制優遇の廃止により、当初目標としていた2万ドル未満の販売価格の維持は難しくなった。これを受け、Slateは量産モデルの基本価格を2万4950ドルに設定した。
バッテリー変更は車両性能にも影響している。新たに採用する65kWhのLFPバッテリーパックは、従来計画より製造コストが低い。角形セルをモジュールを介さずにパックに直接搭載する「Cell-to-Pack」構造を採用し、搭載効率も高めた。
その結果、航続距離は昨年公表した150マイル(約241km)から205マイルへと大きく伸びた。バーマン氏は「より長い航続距離を確保しながら、目標としてきた価格帯に近づけることができた」と評価した。
一方で、最高出力は従来の201馬力から181馬力に低下した。LFPはNMCに比べ電圧が低いためだ。ただ、停止状態から時速60マイル(約97km)までの加速時間は8秒で、従来と同水準を維持した。
Slateのエンジニアは、短距離利用が中心の車両ではLFPの利点が大きいと説明する。LFPは100%充電や深い放電を繰り返しても性能低下が比較的小さく、日常用途に適しているという。
商品戦略も絞り込んだ。当初は航続距離240マイルの大容量バッテリーオプションも検討していたが、今回のLFPパックが車体下部スペースの大半を占めるため、追加設定は難しいと判断した。Slateの主席エンジニア、エリック・カイパー氏は「現行構成だけでも十分にバランスが取れている」としたうえで、「今後の製品戦略は市場の反応を見極めながら決める」と述べた。
Slateは同日、予約受け付けを開始した。2026年10〜12月に量産を本格化する予定だ。低価格戦略と単一のLFPバッテリー構成を打ち出す同社が、2万4950ドルと205マイルの組み合わせで米市場でどこまで存在感を示せるかが注目される。