Samsung Electronicsのグローバル戦略会議が、この1年で様相を一変させた。昨年は危機対応が前面に出ていたが、今年はDRAM首位の奪還とメモリ・スーパーサイクルを追い風に、全社的なAI転換(AX)を最重要課題に据えた。業績の立て直しにとどまらず、仕事の進め方そのものを変える構えだ。
昨年の戦略会議では、第6世代の高帯域幅メモリ「HBM3E」の供給遅延が重荷となり、DRAM市場首位をSK hynixに明け渡した直後だったことから、危機克服と非常経営が会議の基調となった。焦点は、いかにメモリ主導権を取り戻すかにあった。
足元では状況が変わっている。Samsung ElectronicsはDRAM首位を奪還し、メモリ・スーパーサイクルの本格化を背景に業績も持ち直した。Hana Securitiesによると、2026年4〜6月期の売上高は179兆ウォン、営業利益は92兆ウォンを見込む。営業利益は前年同期比1850%増となる見通しだ。
DRAMの平均販売価格(ASP)は当初想定を上回って推移しており、価格前提も上方修正された。サーバー向けとPC向けDRAMが堅調なほか、NVIDIAをはじめとするAI向けプロセッサに搭載されるLPDDRの需要も強いとみられている。
業績回復に合わせ、戦略会議の議題も危機対応中心から全社改革へと広がった。Samsung Electronicsはグループ各社の業務全般にAIを導入する全社AI転換を推進しており、研究開発から生産、マーケティング、支援部門まで、全領域にAIを組み込む方針だ。
イ・ジェヨン Samsung Electronics会長は年頭メッセージで、「働き方と組織DNAを根本から変えなければならない」と強調している。
具体策も会議の前後で動き出した。Samsung Electronicsは6月中に、グループ各社を対象としてGemini、ChatGPT、Claudeなど外部の生成AIサービスを正式導入する。ソフトウェアやマーケティングにとどまらず、開発や製造など幅広い業務に適用し、セキュリティ体制を整備したうえで、活用拡大とリスク統制の両立を図る。
グループ各社の社長級幹部を対象にしたAI集中教育「AXブートキャンプ」も初めて実施する。約50人を対象とする教育は6月中に人材開発院ホアム館で2日間行う。役員約2300人向けの教育は8月12日までに実施し、全社員向け教育も2026年内の完了を計画している。
メモリ回復を追い風にAI転換を最優先
足元の業績反転を支える中心は、当面、汎用DRAMとみられる。Hana Securitiesは、汎用DRAMが2025年下期以降から2026年通年の業績をけん引してきたと分析した。一方、HBM4は顧客向け出荷の遅れなどで、2026年の利益寄与が当初想定を下回るとしている。
もっとも、2027年にはHBM4の構成比が高まり、ASP上昇余地も広がると見込む。汎用DRAM価格は、2026年のHBM価格交渉が進んでいた2025年下期比で約4倍に上昇しただけに、2027年のHBM価格上昇幅も拡大する可能性があるとの見方だ。
Hana SecuritiesはSamsung Electronicsの目標株価を48万ウォンに引き上げた。2027年の営業利益見通しを従来比8%上方修正し、グローバル半導体企業のバリュエーション見直しをメモリ・ファウンドリ部門に反映したと説明した。1カ月超にわたり他のメモリ企業に比べて株価の弱い動きが続いているものの、その出遅れに明確な根拠は乏しいと分析している。
戦略会議の温度感の変化は、教育を受けた役員の発言にも表れている。ある役員は「AIを体系的に学んでみると、これほど簡単に、ここまで多くのことができるのかと驚いた」としたうえで、「現場の働き方をすぐに変えなければならないという切迫感を覚えた」と語った。
Samsung Electronicsの関係者は「AI大転換は、AIネイティブ企業へ飛躍するための革新の出発点だ」と述べ、「AI時代の機会を先取りし、主導していく」と話した。
※Byline(最終出稿想定): Dae-geon Seok ※Email: d2dg@d-today.co.kr