Tesla、Sunrun、Renew Homeは、急増するAIデータセンターの電力需要を見据え、米国で大規模な仮想発電所(VPP)の構築に乗り出す。家庭用蓄電池やスマート機器など既設の分散型エネルギー資源を束ね、最大16.8GWの供給力を目指す。
電気自動車メディアのElectrekが24日(現地時間)に報じた。3社は、家庭に設置済みの分散型エネルギー資源を一つの発電所のように運用する計画で連携する。新たな発電所を建設せず、データセンター事業者や電力会社が活用できる電力を確保する構想だ。
中核となるのは、既存の家庭向けエネルギー資源の統合だ。SunrunとTeslaが展開する数十万台の家庭用蓄電池システムに加え、Renew Homeが管理する800万台超のスマートサーモスタットや接続機器を束ね、大規模な電力資源として活用する。
3社によると、この仕組みにより、追加の発電所建設や送電網の増強、系統接続工事を待たずに必要な電力を確保しやすくなる。新規の発電設備や送電インフラの整備には数年かかるのに対し、分散型エネルギー資源は数カ月で立ち上げられる点を強みとしている。
最初の適用地域は、米国最大のデータセンター集積地であるバージニア州とする。3社は、現時点で300MW超を即時に活用できるとし、家庭用蓄電池やスマート機器の普及が進めば、2030年までに少なくとも500MWへ拡大できるとしている。
あわせて、米国最大の電力市場であるPJMの系統運用機関が実施する信頼度強化プログラムにも供給力を申請した。承認されれば、足元でも1GW超の電力を活用できる可能性があるという。
背景には、AI普及に伴うデータセンターの電力不足がある。3社は、米国のデータセンター電力需要が2026年に41GW、2027年には66GWへ拡大すると見込む。新規発電所や送電網整備だけでは需要増に追いつきにくく、既設の分散型エネルギー資源の活用が現実的な代替策になると判断した。
SunrunのCEO、メアリー・パウエル氏は「19世紀の電力網では、2026年のイノベーションを支えられない」と述べた。データセンターの電力使用が集中する時間帯にVPPを活用すれば、必要な電力を迅速に供給できると説明した。
経済性も訴える。3社が引用したBrattle Groupの分析によると、既存電力網の活用度を高めることで、今後10年間に米国の電気料金を1100億〜1700億ドル抑えられる可能性がある。データセンターの系統接続時期も数年前倒しできるとしている。
現在の電力網は、年間のごく限られた時間に発生する最大需要を前提に設計されており、平常時には設備利用率が低いという。家庭用蓄電池やスマートサーモスタットでピーク時の需要を分散できれば、電力システム全体のコスト低減につながるとみている。
Renew HomeのCEO、ベン・ブラウン氏は「ハイパースケールのデータセンター事業者には、電力コストを引き下げる強い動機がある」と述べた。Teslaで住宅向けエネルギー事業を統括するコルビー・ヘイスティングス上級ディレクターも、米国家庭に設置された蓄電池やスマートサーモスタット、電気自動車は、なお十分に活用されていない大きな電力資源だと強調した。
市場もこれを好感した。同日のSunrun株は取引時間中に一時26%上昇した。投資家は、住宅用太陽光関連事業がAI時代のデータセンター電力需要と結び付き、新たな反復収益モデルに発展する可能性に注目した。
もっとも、3社が示した16.8GWは常時供給できる発電量を意味するものではない。家庭用蓄電池の蓄電容量と、スマートサーモスタットによるピーク時の需要抑制効果を合算した潜在規模だ。実際に足元で即時活用できる規模は、バージニア州で300MW超としている。
今後は、参加顧客の拡大に加え、電力会社プログラムの承認やPJMによる受け入れの可否が計画実現のカギとなる。
今回の取り組みは、大規模発電所の新設ではなく、既存の分散型エネルギー資源をAIデータセンター向け電力供給に振り向ける点に特徴がある。実際の契約や商用供給に結び付くかどうかが、米国の次世代電力市場を占う焦点となりそうだ。