生成AIが就職活動中の学生にとって有力な相談先となる中、Web上での露出が乏しい企業が採用候補から外れやすくなるとの懸念が広がっている。学生の情報収集の起点が検索や合同説明会からAIの回答へ移るにつれ、採用分野でもLLMOへの対応が課題として浮上してきた。
ITmediaが6月22日付で報じたところによると、一部企業では、大規模言語モデル(LLM)に自社業界の有力企業を尋ねても社名がまったく挙がらないケースが確認されている。
こうした問題意識の背景には、実際の応募減少がある。ある企業はゴールデンウィーク明け、2028年卒業予定者向けの夏季インターン募集を始めたが、応募者数は例年の半分にとどまった。
その後の社内調査で、前年の新卒採用面接後アンケートでは、回答者の半数が就職活動にLLMを活用していたことが分かった。同社が複数のLLMに業界名と推薦企業を尋ねたところ、自社名は一度も挙がらなかったという。要因の一つとして、広報費の削減に伴ってWeb露出が減っていた点を挙げている。
こうした変化を受け、採用分野でもLLMOが新たなテーマになりつつある。LLMOは、ChatGPTやGemini、Perplexityなどの生成AIが企業情報を回答に取り込み、推薦先として表示しやすくするための最適化を指す。
現場では、「これまで主にマーケティング領域で語られてきたLLMOが、採用にも影響し始めた」との認識が広がっている。
学生によるAI活用は、すでに無視できない水準に達している。就職支援大手マイナビの調査では、2026年卒業予定の就活生の3人に2人が、就職活動でAIを利用すると答えた。
雇用サービス企業ガクジョの調査でも、就職準備の過程で生成AIを使ったことがある学生は4割に上った。一方で、Z世代の約7割が就職・転職活動で生成AIを使わないとする調査もあり、利用拡大と非利用層の厚さが併存する過渡期にあることもうかがえる。
それでもLLMの浸透が急速に進んだ背景には、学生が信頼して相談できる窓口の不足という構造的な問題がある。大学のキャリア支援センターは、学校ごとに体制や支援の質のばらつきが大きい。
学生からの信頼が厚い大学もある一方で、エントリーシートの添削や面接対策の需要が集中し、十分な人員を確保できないケースもある。卒業間際になって初めて関連組織の存在を知る学生がいる大学や、就職支援部門自体を持たない大学も一部にあるという。
民間の就職相談市場も、学生にとって安定した代替手段とは言い切れない。新卒採用向けの人材紹介会社は、専門性の高い独自データベースを持つ企業と、社会人経験の浅い層を主に扱う企業に大きく分かれる。
同じ会社名で登録していても、前者では技術職が先に提示され、後者では携帯電話販売職の求人が前面に出るといったことが起きる。学生がどのバナーをクリックしたかで、キャリアの出発点が左右されかねない構図だ。
さらに近年は、新卒採用に特化した事業者であっても、より収益性の高い分野へ学生を誘導する傾向が強まったとの指摘がある。2024年から2025年ごろにかけては、紹介手数料が高く採用確定まで進みやすいコンサルティング会社や一部のシステムインテグレーター(SI)に応募者を集めたり、1日で選考を終えるSESや派遣会社へ積極的につないだりする例が目立った。
SNSで「キャリア相談」を掲げるアカウントの多くも、実態は提携収益を目的としたものに近く、運営者の実務経験が不明確なケースも少なくない。
こうした中で、LLMは学生にとって、いつでも使えて表面的には中立に見える相談相手になった。企業には、採用広報の量だけでなく、学生が最初に接する情報経路が検索や合同説明会からAIの回答へ移りつつある現実を踏まえた対応が求められる。
その結果として、Web上での存在感が低い企業ほど、今後の採用競争で不利になる可能性が高まっている。