中国科学院・大連化学物理研究所の研究チームが、全固体電池向けの新たな電解質システムを開発した。NCAセルで350回の充放電後も初期容量の84.15%を維持しており、実用化に向けた課題とされてきた電解質の安定性と耐久性の改善につながる成果として注目されている。
電気自動車メディアのElectrekが22日(現地時間)に報じたところによると、研究チームはPVDFをベースにしたゲル複合電解質を全固体電池に適用し、その研究結果を公表した。
全固体電池は、液体電解質の代わりに固体電解質を用いる次世代電池技術だ。従来のリチウムイオン電池に比べてエネルギー密度を高めやすく、急速充電や安全性向上も期待されることから、電気自動車向けの中核技術として開発競争が続いている。
一方で、固体電解質はイオン輸送効率の確保や電極との界面接触の最適化が難しく、実用化の壁となってきた。特に硫化物系固体電解質は高いイオン伝導性を持つ半面、材料が硬く脆いため、耐久性の面で課題が指摘されている。
今回の研究では、オキシ塩化リチウム(Li3OCl)とPVDFの化学反応に着目した。両者の反応過程で有機相と無機相の結合が強まり、リチウムイオンの移動経路の安定化と伝導性の向上につながったという。
実験でも一定の成果が確認された。NCAセルは1C条件で350回の充放電後も、初期容量の84.15%を維持した。
研究チームは論文で、脱フッ素化反応を活用した新構造によって有機相と無機相の相互作用が強化され、高速なイオン伝導性と広い電気化学安定窓を実現したと説明した。そのうえで、高性能な全固体電池に向けた有望な材料候補になり得ると位置付けた。
ただ、この結果だけで商用化競争における優位性を判断するのは難しい。Factorial EnergyやQuantumScapeなどの先行企業は、1000回超の充放電後も容量の95%以上を維持したとする成果を公表しているためだ。
このため、今回の研究は電解質設計の観点では前進と評価できる一方、寿命性能では業界の先行事例となお差がある。エネルギー密度、航続距離、充電速度に関する具体的な数値も示されておらず、商用化競争での位置付けを現時点で見極めるのは難しい。
それでも、全固体電池の難題の1つである電解質設計に新たな方向性を示した点には意味がある。量産環境でも同等の性能を再現できるかどうかが、今後の重要な検証項目となる。
全固体電池を巡る開発競争は、中国勢を中心に一段と活発化している。中国の完成車メーカー各社は、1000km超の航続距離をうたう全固体電池の開発計画を相次いで打ち出している。
Changan Automobileは、エネルギー密度400Wh/kg級の全固体電池で、CLTC基準1500km超の走行を目標に掲げる。2026年7〜9月までに試験搭載を始める計画だという。
Cheryも3月の「バッテリーナイト」イベントで、1500km超の走行が可能な全固体電池を公開した。Dongfeng Motorも年初、極寒環境で全固体電池のプロトタイプ試験を開始したと発表し、エネルギー密度350Wh/kg、CLTC基準1000km超の性能を示した。
中国以外でも開発競争は加速している。StellantisとFactorial Energyは、北米で初めて全固体電池を搭載した試験車両の走行を開始した。
Mercedes-Benzは昨年9月、Factorialの全固体電池を搭載したEQSベースの試験車両で、1200km超の走行テストを実施した。技術責任者のマルクス・シェーファー氏は、この技術が電気自動車の「ゲームチェンジャー」になり得ると評価している。
HondaとQuantumScapeも今週、電気自動車やその他分野向けの全固体電池の開発・生産に向けた新たな協業を発表した。
業界では、今回の研究が全固体電池の商用化を阻んできた材料面の課題に対し、解決の可能性を示した点を評価する見方が出ている。今後は量産段階でも性能を維持できるかに加え、エネルギー密度と充電速度をどこまで両立できるかが焦点となる。