ビットコインは6万4000ドル前後でもみ合う展開が続いている。米連邦準備制度理事会(Fed)があらためてタカ派姿勢を示した後も大崩れは回避しているが、現物ETFからの資金流出が続き、積極的な買いは入りにくい。市場では、27日に控える109億ドル規模のビットコインオプション満期が短期的な変動要因として注目されている。
ブロックチェーンメディアのDecryptによると、ビットコインは直近1カ月で約13%下落し、足元では6万4000ドル近辺で推移している。昨年10月に付けた12万6080ドルと比べると、なお約50%低い水準にある。
市場参加者の多くは、足元の値動きを明確なトレンド相場ではなく、方向感に乏しい局面とみている。Hashkeyのチーフリサーチャー、ティム・スン氏は、価格反応が限定的なのは売り圧力がほぼ一巡したためで、需要が戻ったことを意味するわけではないと指摘した。
同氏は、上昇基調が続くにはリスク資産選好の回復に加え、長期金利の落ち着きが必要だとの見方を示した。注目材料として、ETFの資金フロー、原油相場、米長期国債利回りを挙げている。
Fedの金融政策も引き続き重荷だ。CoinSharesのリサーチ責任者ジェームズ・バターフィル氏は、ケビン・ウォッシュFed議長があらためてタカ派姿勢を示したにもかかわらず、暗号資産市場の反応は想定ほど大きくなかったと分析した。
一方で、高い実質金利への警戒は、流動性に敏感な資産にとってなお逆風だとした。短期的にはマクロ環境が相場の上値を抑えるものの、ビットコインの代替的な通貨資産としての位置付けが崩れたわけではないとの見方も示した。
現物ETFの資金動向は、弱気材料として意識されている。Bitunixのアナリスト、ディーン・チェン氏によると、18日には現物ETFから約9070万ドルが流出した。直近1カ月の累計流出額は約40億ドルに達したという。
もっとも、足元では流出ペースに鈍化の兆しも出ている。直近1週間では流出額が数億ドル規模にとどまった。チェン氏は、デリバティブ市場でレバレッジ調整が進むなかでも、ビットコインが急落せず一定のレンジを維持している点を挙げ、相場にはボラティリティを吸収する安定化機能が働いていると評価した。
清算注文は下方向に偏っている。チェン氏は、6万1900ドル近辺に約13億ドル規模のロング清算が集中する一方、6万4800ドル近辺には約8億7000万ドル規模のショート清算が集まっているとみる。
それでも価格が下値の清算ゾーンに押し込まれていないことから、同氏は現在の市場をレンジ相場のなかで持ち高の入れ替えが進む局面と位置付けた。
短期材料より中期的な要因を重視する見方もある。Algos Technologiesの戦略・営業統括責任者スティーブン・ブントケ氏は、米国のクラリティ法案の採決が7月4日に予定されており、法案が成立しなければ市場構造法案を巡る議論が第4四半期に先送りされる可能性があると警告した。
米インフレの鈍化についても、イラン停戦の影響が十分に織り込まれるまでには2〜3カ月程度を要し、すぐには表れにくいとの見通しを示した。そのうえで、「今回の局面が底である可能性はあるが、当面はその底値圏にとどまるかもしれない」と述べた。
年初来の資金フローも市場心理の弱さを映している。ブントケ氏によると、2025年に200億ドルを超えたETFの純流入は、2026年には32億ドルの純流出に転じた。同期間にビットコインは年初来で約26%下落し、主要トークンのバスケットも約50%下落したという。
大口投資家の動きからは別の兆候も見える。Chainflipでは、直近90日間でビットコインへの流入額が2億3900万ドルと最大だった。保有者のあいだでは売却よりも、担保ローンを通じて流動性を確保する動きが目立ったという。
Chainflipのマーケティング責任者ピーター・スメダス氏は、「投資家はビットコインを売って市場から離れるのではなく、ビットコインを担保に資金を確保しようとしている」と説明した。
目先の最大の注目材料は、27日に予定される109億ドル規模のビットコインオプション満期だ。方向感を欠く相場だけに、大型の満期イベントが短期的な値動きを増幅させる可能性があるとの見方が出ている。
予測市場のMyriadでは、ビットコインが5万5000ドルまで下落する可能性を70%と見込んでおり、前週から5ポイント上昇した。
市場では、今回の局面は急騰急落そのものより、市場構造の変化が主題になっていると受け止められている。ETFからの資金流出、デリバティブ市場のレバレッジ調整、担保ローン需要が同時進行し、ビットコイン市場は売り圧力の一巡と新規需要の乏しさのはざまで方向感を探っている。
Fedはタカ派的な据え置きを続け、先行きの緩和期待も後退している。明確なリスクオンの材料は乏しいが、ビットコインは想定以上に調整を吸収している。デジタル資産ETP全体の資金流出も1億4900万ドルへ鈍化しており、厳しい金融環境下でも投げ売りが広がっている状況ではない。