Samsung Electronicsの職務適性検査を前に行われた受験者向け予備招集の様子。写真=Samsung Electronics

韓国の半導体業界で、人材争奪戦の構図が変わり始めた。これまでは高年俸を背景にした転職が主流だったが、足元では成果給を巡る対立に伴う離職圧力と企業間のけん制が重なり、経験者の移動は鈍化している。一方で各社は、その不足分を大規模な新卒採用で埋めようとしている。

発端となったのは処遇への不満だ。Samsung Electronicsなど主要半導体企業では、成果給の算定方式を巡る対立や労組のストライキが続き、報酬への不満から設計人材の転職意向が高まった。こうした人材を巡っては、SK hynixに加え、海外ファブレスや資金調達を進めた半導体スタートアップも獲得競争に参入しているという。

とりわけ業界では、SK hynixがSamsung Electronicsのメモリー、System LSI、ファウンドリーの各部門から設計人材を採用してきたことで、Samsung Electronics側の人材流出懸念が強まったとの見方が出ている。

採用手法にも変化がみられる。SK hynixは最近、設計人材を3桁規模で募集した。一方、会社員向けコミュニティでは、Samsung Electronicsの経験者採用枠に応募した一部候補者に対し、締め切り前にもかかわらず不採用通知が届いたとの書き込みが出た。

業界では、経験者枠と新卒枠の重複応募ができないため、新卒選考への切り替えを促すシグナルではないかとの受け止めが広がっている。経験の浅い、いわゆる「中古新卒」を新卒一括採用で吸収すれば、競合他社からの引き抜き批判や規制当局の視線を和らげやすいとの計算があるとみられる。

こうした動きの背景には、企業間のけん制もある。業界では、Samsung Electronicsの人事部門がSK hynixに経験者採用の自制を求めたほか、「国家中核技術」の保護を名目とした政府レベルの圧力も加わったとの見方が出ている。

このため、Samsung ElectronicsからSK hynixへ直接移る経験者の転職ルートは、当面細る可能性があるとの分析もある。

人材獲得競争は国内にとどまらない。Intelは最近、イ・ソクヒ前SK On社長(前SK hynix CEO)をファウンドリー部門の上級副社長(EVP)に起用した。

同氏はIntel Foundryで先端パッケージング、システム統合、バックエンド技術の開発・製造を統括し、リップブ・タンCEOに直接報告する。SK hynixやSK Onで韓国の半導体・電池事業を率いた人物が、グローバル競合の中枢ポストに移った形だ。

こうした争奪戦の底流にあるのは、慢性的な人手不足である。政府や韓国半導体産業協会などによると、韓国の半導体産業で必要とされる人材は、2021年の17万7000人から2031年には30万4000人へ増える見通しだ。新たに12万7000人の上積みが必要になる。

一方、毎年の人材供給は5000人規模にとどまる。この傾向が続けば、2031年には必要人材の約18%に当たる5万4000人が不足すると推計されている。育成に時間がかかる点も重い。単純製造人材でも最低1年の教育が必要で、研究開発(R&D)人材には10年以上の投資が要るという。

高度人材の流出リスクも一段と意識されている。課題は供給の入り口でも顕在化している。政府は契約学科や特性化大学を通じて人材を補おうとしているが、入学そのものを敬遠する動きが目立つ。

鍾路学院によると、2026学年度の一般選抜では、Samsung Electronicsの採用連携型である延世大学システム半導体工学科で、32人募集に対し合格者62人が登録を放棄した。前年より47.6%増えた。

SK hynixへの就職が保証される高麗大学半導体工学科でも、15人募集に対して37人が登録を放棄し、前年から76.2%増加した。就職保証があっても、受験生がソウル大学や医学・薬学系に流れたためという。4年後の卒業時には現在のスーパーサイクルが終わっている可能性があるとの不確実性が背景にあるとされる。

転職を後押しする要因も変わってきた。以前は基本給の引き上げが主な動機だったが、最近は成果給制度の透明性や組織文化への満足度が、より重要な判断材料になっている。

NVIDIAやTSMCといった海外大手との報酬格差に加え、韓国内企業の間でも成果給の支給水準の差が可視化され、主要エンジニアの離職意向が高まったとの分析もある。

人材の偏在は、単なる企業間競争にとどまらない。不足が最も深刻なのは、次世代半導体設計、すなわちファブレスやメモリーの中核IP関連職種だという。

特定の大企業に設計人材が集中し、そこから流出が起きれば、「国家先端戦略産業法」に基づく国家中核技術の流出リスクに直結する。政府や人事当局が大企業間の経験者移動にブレーキをかける根拠も、この点にある。

結局の焦点は、処遇と育成の両立にある。設計人材は先端プロセス競争の中核資源であり、経験者の移動抑制が長期化すれば、人材確保コストの上昇や企業ごとの人材偏在の深刻化を招く懸念がある。

成果給制度や処遇への不満を是正すると同時に、国家レベルでの人材育成と流出防止策を並行して進める必要があるとの指摘が出ている。業界関係者は「高度人材はすでに言い値の状態だ」としたうえで、「人材流出が技術競争力の低下につながるリスクを、より重く見るべきだ」と話した。

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