Teslaが、モジュール型のAIデータセンターシステム事業に乗り出す可能性が浮上した。米電気自動車メディアのElectrekによると、同社は21日(現地時間)、米国特許商標庁に「Megapod」の商標を出願した。構想通りに製品化されれば、AI向けインフラ市場でNVIDIA陣営と競合する可能性がある。
今回の出願は、将来的な使用を前提とする「intent to use」に基づくもの。製品はまだ発売されていないが、出願書類には対象分野が比較的具体的に記載されている。Megapodは、AIコンピューティング向けのモジュール型データセンターハードウェアシステムとして、コンピューターサーバー、AIデータ処理用ハードウェア、ネットワーク機器、配電設備、冷却システムなどを含む構成とされた。
Teslaはあわせて、AIワークロード向けの自己完結型モジュール式コンピューティングシステムも適用対象に挙げた。演算装置に加え、配電や冷却設備、監視・管理・最適化用のダウンロード型ソフトウェアまでを単一ユニットとしてまとめて提供する想定だ。個別のチップやバッテリーではなく、AIの学習・推論に必要な設備をサーバールーム単位でパッケージ化して供給する構想に近い。
もっとも、市場環境は厳しい。AIデータセンター向けの統合システムでは、すでにNVIDIAが事実上の標準に近い製品群を打ち出している。GB200 NVL72は72基のBlackwell GPUと36基のGrace CPUを搭載するラック単位のシステムで、DGX SuperPODはこれを数千GPU規模のクラスターへ拡張した構成だ。DellやSuper Micro Computerも同プラットフォームに対応した製品を展開しており、Megapodが投入されれば、立ち上がり時点から競争は避けにくい。
名称面でも、完全な新規性があるわけではない。液浸冷却を手掛けるSubmerは、すでに「Megapod」の名称でコンテナ型データセンター製品を販売しており、関連商標も保有している。ただ、Teslaの出願はコンピューターハードウェア分野を対象としている。
一方で、Teslaの課題はコンピュートハードウェア分野での基盤の薄さにある。テキサス州のギガファクトリーで運用するAI学習クラスター「Cortex」では、NVIDIAのH100級GPUを約6万7000基使用している。現時点では、TeslaはNVIDIAの競合というより、大口顧客としての側面が強い。
自社AIハードウェア開発も順風ではなかった。Teslaは2025年8月、Dojoスーパーコンピュータープロジェクトを中断した。イーロン・マスク氏も当時、Dojo2の設計について「進化の行き止まり」との認識を示している。
その後、TeslaはAI5とAI6チップへ軸足を移したが、開発の遅れが続いている。AI5はテープアウトが約2年遅延し、AI6もSamsung Electronicsの2ナノメートル生産の遅れで約6カ月後ろ倒しとなった。量産時期は2027年末へ延期された。
こうした経緯を踏まえると、MegapodでTeslaが強みを発揮し得る領域は、演算性能そのものよりも電力・熱管理にあるとの見方が出ている。Teslaはすでに、Megapackと新型のMegablock蓄電装置をAIデータセンター向けの電力バッファ用途として販売している。イーロン・マスク氏が率いるxAIも、AI学習向けの電力確保のため、約10億ドル(約1500億円)規模のMegapackを購入したと伝えられている。
このためMegapodも、サーバー設計の競争力を前面に出すというより、パワーエレクトロニクスや熱管理、筐体を含むインフラ一体型パッケージとして展開される可能性がある。