SASは、企業向けデータ/AI基盤を巡る競争が激化する中、業種特化ソリューションとAIガバナンスを差別化の柱として打ち出した。合成データ生成ソリューション「Data Maker」やエンタープライズAIガバナンス基盤「SAS AI Navigator」、クラウドベースのデータ/AIプラットフォーム「Viya」を軸に、意思決定支援を強化する方針だ。
同社のアジア太平洋地域カスタマーアドバイザリー統括副社長、ディーパク・ラマナサン氏は、ソウルで開いた「SAS Innovate on Tour 2026」の会場でメディア向けラウンドテーブルを開催し、こうした戦略を説明した。
ラマナサン氏は「50年にわたり蓄積してきた業種知見を基に、意思決定を支援するデータ活用ソリューションを提供している」と述べた。SASは1976年の設立以来、銀行、製造、公共、ヘルスケア、ライフサイエンスなど、規制対応が重い分野を中心に分析ソリューションを展開してきたという。事業領域は臨床分析を起点に、銀行や政府、ヘルスケア、ライフサイエンス、製造へと広がった。
同氏は「当社が提供しているのは単なるプラットフォームではなく、各業種の課題を解決するアプリケーションだ」と強調した。具体例として、銀行の最高リスク責任者(CRO)向けの与信・意思決定支援、マネーロンダリング対策、サプライチェーン・インテリジェンスなどを挙げた。
同席したグローバル産業・ソリューションマーケティング統括ディレクターのマーク・デマース氏も、「多くの企業が企業データの分析を掲げているが、SASの差別化の中核は意思決定支援と業種別ソリューションにある」と話した。銀行、公共、製造などの現場経験を持つ人材が多く在籍している点も強みとして訴求した。
SASは、合成データ生成ソリューション「Data Maker」も業種特化戦略の一環と位置付ける。ラマナサン氏は「Data Makerはライフサイエンス企業の合成データ生成だけでなく、金融詐欺やデジタルID詐欺の検知にも活用できる」と説明。「AIを単にプラットフォームとして実装するのではなく、顧客が直面する具体的な業務課題の解決に適用している」と述べた。
もう一つの重点領域として挙げたのがガバナンスだ。エンタープライズAIガバナンスプラットフォーム「SAS AI Navigator」は、企業が利用する大規模言語モデル(LLM)やAIエージェント、オープンソースモデル、SAS独自モデルといった多様なAI資産とユースケースを可視化し、統制できるよう支援する。
ラマナサン氏は「SASのモデルだけでなく、顧客が利用するオープンソースモデルや各種LLMに対しても、ガバナンスとエージェントフレームワークを提供する」と説明した。その上で「企業がAI導入に当たってまず整備すべきなのは、データ管理とAIガバナンスだ」との認識を示した。
SASはあわせて、クラウドベースのデータ/AIプラットフォーム「Viya」の強化も進めている。重点の1つが、主要な外部データプラットフォームとの連携拡大だ。既存のデータ基盤上でSASの分析機能を直接利用できるようにし、導入の柔軟性を高めるとしている。
Viyaも業種特化を重視する。ラマナサン氏は「Viyaを基盤に、業種別アプリケーションを事前にパッケージ化したエンドツーエンドの形で提供する。特定の職務や機能に合わせて設計している点が特徴だ」と述べた。銀行向けでは、CRO向けの与信・意思決定支援、金融犯罪対策責任者向けのマネーロンダリング防止、マーケティング責任者向けの顧客インテリジェンスを提供するとした。
「SAS Viya Copilot」は、Viyaに組み込まれた対話型AIアシスタントで、分析ワークフローの中で専門家がAIを活用できるよう支援する。SASが独自に学習させたモデルを採用し、Microsoft Azure上で提供する。
デマース氏は、他のクラウドサービス経由での提供に加え、オンプレミスでの展開も検討していると明らかにした。韓国では金融分野でネットワーク分離規制が緩和されつつあり、金融機関がどのクラウドを採用するのか注視しているという。韓国の公共市場開拓に向け、現地クラウド事業者との協業準備も進めていると説明した。