J・D・バンス米副大統領は、ドナルド・トランプ米大統領が、米政府による主要AI企業の株式保有に前向きな考えを示していると明らかにした。政権内では、こうした持ち分を国富ファンドに組み込む案も議論されているという。
ブロックチェーン関連メディアのCryptopolitanが21日(現地時間)に報じた。バンス氏は最近のポッドキャスト番組で、トランプ氏が政府によるAI企業株の保有を、国富ファンド構想の一つとして受け止めていると語った。
バンス氏は「トランプ大統領は、米国が大手AI企業の一部を保有することに好意的だ。国富ファンドの考え方の一つとして受け入れている」と説明した。
その上で、今後10~20年でAI企業が数兆ドル規模の価値を生み出したとしても、税制だけでその果実を労働者に十分還元するのは難しいとの見方を示した。
さらに、「労働者には単なる再分配ではなく、意思決定のプロセスに関わる機会が必要だ」と述べ、労働組合などを通じた新たな参加の仕組みにも言及した。
今回の議論は、米政界で浮上しているAIの富をどう共有するかという論点とも重なる。バーニー・サンダーソン上院議員は、主要AI企業の株式の50%相当を連邦基金に組み入れる法案を提案していた。
サンダーソン氏は、この基金が長期的に7兆ドル規模まで成長し、米国民に年間約1000ドルを支給できると主張している。法案には、先進AI企業に一度限りの株式課税を課し、連邦基金を創設する仕組みが盛り込まれた。
一方、業界の受け止めは分かれている。イーロン・マスク氏はソーシャルメディアで、政府がAI企業の株式を持つより、国民に直接資金を給付する方が望ましいとの考えを示した。
マスク氏は「AIとロボット技術の進展で生産性が爆発的に高まれば、通貨供給の拡大よりも財・サービスの供給増の方が速くなる可能性がある」とし、「インフレよりデフレのリスクの方が大きい」と述べた。
投資家で起業家のマーク・キューバン氏も懐疑的だ。政府がAI企業株の半分近くを保有する案について、「計画と呼ぶには程遠い」と評した。
また、AI企業が今後、数千億ドル規模の追加資金を必要とする中で、政府が確保した持ち分が納税者にどこまで利益をもたらすのか疑問だと指摘した。誰が国民に代わってその持ち分を管理し、意思決定を担うのかという点にも疑問を呈した。
トランプ政権内では、関連する議論がすでに進んでいるとされる。政権高官らは、AI企業の出資持分の枠組みをどう設計するか検討してきたという。
報道によると、スコット・ベッセント財務長官は、AI企業株を「トランプ口座」の初期資産として活用する案を支持した。一方、ハワード・ラトニック商務長官は、その持ち分を国富ファンドに組み入れる案を重視したとされる。
もっとも、政策はなお初期段階にある。トランプ氏は最近、AI業界の最高経営責任者(CEO)らと会談し、AI産業が生み出す富を国民とどう共有するか議論すると表明したが、具体策はまだ示していない。
市場では、政府によるAI企業株保有が現実味を帯びた場合、今後新規株式公開(IPO)を目指すAI企業に影響が及ぶとの見方が出ている。とりわけ、OpenAIやAnthropicといった大手AI企業が今後どう対応するかに関心が集まっている。
政界でも懐疑論は少なくない。シンシア・ルーミス氏はこの提案を理解しがたいとし、ジョン・ケネディ氏もAI企業の経営陣に不信感を示した。
政府によるAI企業株保有の構想が実際の政策に結び付くのか、またAI産業と資本市場にどのような影響を及ぼすのかが、今後の焦点となりそうだ。