ビットコインの財産性と現物返還命令の可否は別論点であることが浮き彫りとなった。写真=Shutterstock

英裁判所は、ビットコインが英国法上の「財産」に当たるとの従来の立場を改めて確認した。一方で、債務者に対してビットコインそのものの現物返還を命じられるかどうかについては判断を示さず、暗号資産債務の執行実務に課題を残した。

Cryptopolitanが6月20日付で報じたところによると、ロンドンで審理された「Hussein v. Fix」で、裁判所はビットコインの財産性を認めたものの、現物での弁済を命じられるかという点については明確な結論を示さなかった。

本件では原告が、既存の合意に基づいて支出した事業費のうち7.8BTCの返還を求めて提訴した。被告は出廷せず、請求内容にも異議を唱えなかった。

裁判所は、ビットコインが英国法上の財産に該当すると判断した。これは、2019年に英国管轄権タスクフォース(UK Jurisdiction Taskforce)が示した法的見解以降、英法曹実務で共有されてきた解釈を追認する内容だ。財産性が認められることで、ビットコイン保有者は民事訴訟を通じて権利主張しやすくなる。

ただ、本件の争点は財産性そのものではない。焦点となったのは、裁判所が債務者に特定の暗号資産の現物返還を命じられるのか、それとも返還時点の英ポンド換算額の支払いにとどまるのか、という点だった。

英国の裁判所ではこれまで、株式や実物資産など現金以外の資産について返還を命じた例がある。だが、暗号資産の現物返還に同じ法理を適用できるかについては、確立した判例がないとされる。

この論点は、ビットコインの価格変動が大きいだけに実務上の影響も大きい。例えば、債権者がビットコイン価格3万ドル時点で7.8BTCを貸し付け、返済時に価格が10万ドルを超えていた場合、当時の英ポンド建て価値でしか回収できなければ、受け取る経済的価値は大きく目減りしかねない。逆に価格が急落した局面では、債務者側の負担が重くなる可能性もある。

こうした事情から、法務実務では契約条項の明確化が重要視されている。国際法律事務所Norton Rose Fulbrightは、今年1月に公表したデジタル資産紛争に関する報告書で、各国の裁判所がデジタル資産を巡る信託、占有権、契約上の義務に関する法理を発展させている一方、英国では暗号資産の現物弁済を巡る執行基準がなお不明確だと指摘した。

このため、契約書に「ビットコインで返済する」と明記されていない場合、裁判所が法定通貨ベースの賠償を選ぶ可能性があるとの見方も出ている。

暗号資産の法的性質を巡る判断は他国でも分かれる。南アフリカ共和国の高等裁判所は最近、押収された1680BTCを外為管理規定上の「資本」に分類した。ビットコインが現地通貨で売買され、投資や決済手段として利用されている点を根拠に挙げた。

一方、南アフリカ共和国の中央銀行と金融当局は、暗号資産は法定通貨ではないとの立場を維持している。市場では、今回の英国での判断が、暗号資産債務の執行を巡る先例となる可能性があると受け止められている。

法律専門家の間では、今後、英国議会や法律委員会に対し、暗号資産の現物弁済に関する基準の明確化を求める声が強まる可能性があるとの見方もある。上級審の判断がない現状では、ビットコインを貸し借りする当事者は、返済方法や基準価格、支払時点を契約書に具体的に定めておく必要がある。

市場関係者の間では、この事件が、ビットコイン建て債務を実際にビットコインで回収する権利が法的に認められるかを占う試金石になり得るとの見方も出ている。

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