米国南西部の大規模送電インフラ「SunZia」が本格稼働した。Pattern EnergyとHitachi Energyが発表した。ニューメキシコ州で発電した再生可能エネルギー由来の電力を、アリゾナ州など西部の需要地へ送る。
SunZiaは、総事業費110億ドルの風力発電・送電一体型プロジェクトだ。送電線は全長550マイルのHVDC(超高圧直流)方式で、ニューメキシコ州のSunZia風力発電所で発電した電力を最大3000MW送電できる。供給量は米国の約100万世帯分に相当するという。
背景には、発電設備の増強だけでは解消できない送電網の制約がある。米国ではデータセンターの増設、電化の進展、産業成長を受けて電力需要が拡大している。
SunZiaは発電地と需要地を直接結ぶことで、長距離送電時の損失を抑えつつ、大規模な風力電力を消費地に届ける仕組みを整えた。再生可能エネルギーの供給力を実際の需要へ結び付けるインフラとして位置付けられる。
風力発電所自体の規模も大きい。SunZia風力発電所は3.65GW規模で、916基のタービンで構成する。
両社によると、プロジェクトの中核は発電設備だけでなく、発電した電力を必要な地域へ確実に送る送電網にある。SunZia送電線の本格稼働により、再生可能エネルギー電力を南西部全域の顧客に供給できる体制が整ったとしている。
技術面でも大型案件だ。SunZiaでは±525kV級のHVDC設備を採用した。両社は、米国内の電圧形変換器ベースのHVDC導入事例として最大規模で、世界でも有数の水準だとしている。
系統運用の面では、太陽光発電の出力が夕方に急減する「ダックカーブ」への対応にも寄与する可能性がある。HVDCは電力潮流を迅速に調整できるため、太陽光の出力が落ちる時間帯に風力電力をより多く供給しやすい。この結果、化石燃料火力への依存低減にもつながるとしている。
気象変動などで系統条件が変化する局面で、安定性を高める役割も期待される。両社によると、SunZiaシステムは、気象に起因する変動を含めた状況でも系統安定化を支援できるよう設計したという。
CO2削減効果も大きい。SunZiaプロジェクトは、初年度の年間フル稼働ベースで約900万トンの二酸化炭素排出削減を見込む。両社は、ガソリン車約300万台を1年間道路から減らすのに相当する規模だとしている。
今回の稼働は、米国で再生可能エネルギーの拡大と送電網強化を並行して進める必要性を改めて示した。大規模な風力発電所の建設だけでは電力供給は完結せず、需要地まで結ぶ長距離送電インフラが需要増加と系統安定化の前提になるためだ。SunZiaは、西部電力網における再生可能エネルギーの実効的な供給力を高める事例として注目されそうだ。