AI向け電力需要の急増を受け、既存の送電網接続ルールの見直しが課題となっている。写真=Shutterstock

米連邦エネルギー規制委員会(FERC)は、AIデータセンターなど電力消費の大きい超大型需要家を対象に、送電網への接続ルールの再点検に乗り出す。急増するAIインフラ需要に対し、現行制度では接続の遅れや費用負担の在り方に対応しきれていないと判断した。

6月19日(現地時間)にGIGAZINEなどが報じたところによると、FERCは地域送電網の運用機関に対し、大規模需要家の送電網接続手続きを見直すよう求める「Show Cause Order」の草案を承認した。

対象となるのは、FERCの管轄下にある6つの地域送電網運用機関と、送電設備保有者。命令の発出後60日以内に、現行ルールの妥当性を説明するか、制度改善案を提出するよう求める。

最大の狙いは、AIデータセンターの接続待ちの長期化を是正することにある。生成AIを巡る競争の激化で、米大手テック企業は数十億ドル規模のデータセンター投資計画を相次いで打ち出している。一方、地域によっては送電網への接続承認や必要設備の確保に数年を要し、計画の遅延が広がっている。

FERCは、現行の接続制度がAI産業の拡大ペースに追いついていないとみている。委員会は今回の目的について、送電網の安定性を維持しつつ、一般需要家への電気料金負担のしわ寄せを抑えながら、データセンター接続を迅速化することだと説明した。特定事業者の接続コストが家庭や企業に転嫁されない仕組みも、見直しの対象に含める。

検討対象には、データセンター事業者が自家発電設備を整備し、独自電源を確保する選択肢も含まれる。あわせて、地域送電網運用機関には既存インフラの活用度を高める先端技術の導入も促す方針だ。AI時代に対応した送電網運用ルールの見直しにつながる動きとなる。

草案はFERC委員の全会一致で支持された。ロラ・スウェット委員長は採決後、今回の判断を「歴史的な措置」と位置付け、州政府の権限を尊重しながら安定供給を維持し、超大型需要家のコストを一般需要家に転嫁しない形で電力市場を将来に対応させていく考えを示した。

今回の決定の背景には、AIを巡るインフラ競争の激化がある。米国ではデータセンター建設需要が急拡大しているが、送電網接続の遅れに加え、許認可手続き、地域住民の反対、変圧器など主要部材の不足、熟練人材の不足が重なり、計画の遅延が相次いでいる。

業界内では、送電網接続の問題を解消できなければ、AIデータセンター投資の拡大にも限界が生じかねないとの見方が出ている。

今後60日間で、地域送電網運用機関がどのような改善案を示すのかがまず焦点となる。あわせて、データセンター事業者が既存送電網の活用を優先するのか、自家発電設備の整備を進めるのかも、米国のAIインフラ競争力を左右する要因となりそうだ。

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