AIデータセンターの高密度化を背景に、バッテリー需要が電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵装置(ESS)に加え、サーバーラック向けにも広がっている。ラック当たりの消費電力が急増し、施設単位の無停電電源装置(UPS)だけでは瞬時の負荷変動を吸収しにくくなっているためだ。サーバー近傍で短時間・高出力の放電を担うバックアップバッテリーユニット(BBU)が、新たな需要先として浮上している。
BBUは、ビッグテック主導のデータセンター向けオープン標準の中で位置付けられている。Metaなどが参加するOpen Compute Project(OCP)の「Open Rack V3(ORV3)」では、ラックの電源構成を中央集約型のパワーシェルフとBBUシェルフで構成する。BBUシェルフには5+1冗長の6モジュールを搭載し、交流(AC)電源が停止した際に一定時間、バックアップ電力を供給する。
背景にあるのは、ラック電源の高電圧化だ。従来のORV2ではバックプレーン電圧が12V、システム電力は3kW程度だった。しかし、電力需要の拡大で電流が増え、銅配線や発熱の負担が大きくなった。このためORV3ではバックプレーン電圧を48Vへ引き上げた。同じ電力をより低い電流で送れるようにし、配線負荷と発熱を抑える狙いがある。
こうした変化の中で、BBUはバックアップ電源を施設単位からラック単位へ分散する役割を担う。Schneider Electricのデータセンター・サイエンスセンターの資料によると、電源供給装置(PSU)を統合し、BBUをラック単位で配置すれば、上位側のUPSを省けるという。特定のBBUに不具合が生じても影響は単一ラックにとどまる一方、中央集約型UPSでは多数の機器に影響が及ぶ可能性があるため、分散構成の方が設備の信頼性を高めやすいとしている。
こうした需要を押し上げている最大の要因が、AIラックの電力密度の急上昇だ。Data Center Dynamics(DCD)が伝えたNVIDIAの説明によると、GPUのHopper世代ラックの消費電力は約40kWだったが、Blackwell世代では約120kWに上昇した。2026年下半期に量産されるVR200 NVL72ラックは約190〜230kW、2027年下半期のRubin Ultra NVL576ラックは600kWに達する見通しという。負荷変動の振れ幅が大きくなるほど、ラック近傍で応答する分散型バッテリーの必要性は高まる。
数千基のGPUが一斉に同じ演算を実行すると、データセンター全体の電力負荷は大きく変動し、送電網の安定性にも影響を及ぼしかねない。このためUPSの役割は、従来の非常用バックアップに加え、能動的な電力平滑化へと広がりつつあるとの見方もある。GPU側の急激な負荷変動を受け止めつつ、上位の電力網から見た負荷を平準化する必要があり、そのミリ秒単位の変動吸収をラックやチップに近い側で担うのがBBUという位置付けだ。
市場見通しも明るい。Samsung SDIは1〜3月期のコンファレンスコールで、世界のBBU市場が2026年に前年比70%超の成長となり、8億ドル規模に達するとの予測を示した。クラウドサービス事業者(CSP)が直接、必要数量を確保しようとする動きが出ており、需要見通しは上方修正されていると説明した。
需要増の恩恵は、セルや部材のサプライチェーンにも広がりそうだ。Samsung SDIは「InterBattery 2026」で、出力を120Wから200Wへ高めた21700フォームファクターベースの次世代BBU向けバッテリーを公開し、6月に生産へ入る。LG Energy Solutionは、LFPベースのESS供給拡大と並行して、BBU向けのタブレス21700円筒形電池を下半期に量産する計画だ。Hyundai Motor Securitiesは、北米向けBBU需要の大半をPanasonic、Samsung SDI、LG Energy Solutionの3社が担うと分析した。
今後の焦点は、次世代の電源構造がどこまで高電圧化するかにある。Metaの次世代ラックは、±400Vの高電圧直流(HVDC)により容量を800kWまで引き上げた。NVIDIAと協力各社は、1MW級ラック向けの800VDC電源構造を、2027年のRubin Ultra投入時期に合わせて開発しているという。業界関係者は「セルの高出力・高電圧対応力が、今後のBBU市場の競争力を左右する」と話している。