写真=adidas

2026年FIFAワールドカップ公式球「Trionda」の空力特性を調べた日米韓の共同研究チームの論文が、国際学術誌「Applied Sciences」に掲載された。風洞実験の結果、Triondaは過去の公式球5球の比較で最も低い臨界速度を示し、軌道の安定性は高かった一方、多くの速度域で飛距離はやや短くなる傾向が確認された。

Triondaは、2026年大会の公式試合球としてadidasが開発した。名称は、3カ国共催を示す「Tri」と、スタジアムのうねりを意味するスペイン語「Onda」を組み合わせたもの。赤、青、緑の3色で開催国のカナダ、米国、メキシコを表現し、カエデの葉や星、ワシのモチーフもあしらった。

構造面では、ワールドカップ公式球として初めて4パネル構造を採用した。パネル数が少ないほど表面は滑らかになり、空力特性や軌道安定性に影響しやすくなる。このため、深い継ぎ目に加え、各パネルに3本の立体的な溝と微細な表面加工を施した。

研究は、米ピュージェットサウンド大学のジョン・エリック・ゴフ氏、韓国ソウル女子大学のホン・ソンチャン氏、日本の筑波大学大学院のリウ・リチュアン氏、環太平洋大学のアサイ・タケシ氏による共同チームが実施した。

研究チームは筑波大学の風洞施設で、秒速7〜35メートルの範囲でTriondaを試験した。比較対象には、Jabulani(2010年)、Brazuca(2014年)、Telstar 18(2018年)、Al Rihla(2022年)の過去4大会の公式球を用いた。

実験の結果、Triondaの臨界速度は、2種類の向き(オリエンテーションA、B)のいずれでも秒速11.9メートル(時速約43キロ)だった。5球中で最も低い値で、Al Rihla、Telstar 18、Brazucaは秒速14〜18メートル、Jabulaniは秒速21.9〜26.9メートルと最も高かった。臨界速度は抗力が急変する領域で、ボールの軌道や飛距離に大きく影響する。

臨界速度が低いことは、試合で想定される幅広い速度域で、境界層が早い段階で乱流へ移行することを意味する。特にコーナーキックやフリーキックに相当する速度域では、Triondaの抗力係数は歴代の公式球の中でも安定して推移した。2010年大会のJabulaniが、臨界速度域の無回転シュートで予測しにくい変則的な落下軌道を示したのとは対照的だ。

一方、乱流域におけるTriondaの抗力係数は、Brazuca、Telstar 18、Al Rihlaをわずかに上回った。軌道シミュレーションでも、多くの速度域で飛距離が過去の公式球よりやや短くなる傾向が出た。研究チームは「選手は、ロングキックが想定より数メートル手前で落ちると感じる可能性がある」と説明している。

また、継ぎ目の形状と臨界速度の間には、一貫した相関も確認された。継ぎ目が狭く浅く、総延長が最も短い1.98メートルのJabulaniは臨界速度が最も高く、継ぎ目が広く深いボールほど臨界速度が低くなる傾向がみられた。研究チームは、抗力が急減する位置は、継ぎ目の幅、深さ、長さに加え、パネル表面の加工が複合的に作用した「有効粗さ」で決まり、単一の指標だけでは説明できないと指摘した。

ただし、今回の実験が対象としたのは無回転のボールだ。実際の試合では多くのキックに回転が加わるほか、温度、湿度、気圧などの環境条件も軌道に影響する。研究チームは今後、回転を伴う状態での実験や、表面粗さの精密な測定手法の改善が必要だとしている。

Triondaには「Connected Ball Technology」も搭載した。本文によると、この技術によってVAR映像だけでは判別が難しい場面でも、ボールタッチの有無の確認に活用できるという。

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