米国で銀行規制の見直し論が広がっている。写真=Shutterstock

米大手銀行8行が、金融当局に対しバーゼル資本規制の緩和を求めている。銀行側は、見直しが進むバーゼルIII最終化案によって米国債取引に必要な資本負担が重くなれば、市場流動性が低下し、貸出余力や暗号資産市場にも影響が及びかねないと訴えている。

暗号資産メディアのCryptopolitanが18日付で報じたところによると、8行は最近提出した意見書で、新たな資本規制によりトレーディング部門の資本負担が30%から最大89%増える可能性があると主張した。

銀行側が特に問題視しているのは、米国債市場に対するリスク加重の扱いだ。現行案のままでは、国債取引を担う金融機関の負担が増し、市場の流動性を損なうおそれがあるとしている。

米国債は世界の金融市場で代表的な安全資産であり、担保としても広く使われている。この取引機能が弱まれば、借入コストの上昇や市場変動の拡大を招く可能性がある。業界は、2020年の新型コロナ流行初期に起きた米国債市場の混乱や、2023年の米地銀危機を例に挙げ、銀行の仲介機能が弱まると国債市場全体の流動性が大きく揺らぐと指摘している。

規制当局側も、制度調整の必要性を一定程度認めている。米連邦準備制度理事会(Fed)のミシェル・ボウマン副議長は、補完的レバレッジ比率(SLR)や「バーゼルIIIエンドゲーム」の修正案を検討してきた。

ジェローム・パウエルFed議長も昨年の公開発言で、銀行が国債と準備預金を大規模に保有するようになった結果、現行のレバレッジ比率規制が想定以上に強い制約として機能しているとの認識を示した。

ボウマン副議長は、現行基準が資本配分をゆがめているとして、系列ブローカー・ディーラーを含むグループ全体で大手銀行が資本をより効率的に使えるよう、制度見直しが必要だと訴えた。Fed、通貨監督庁(OCC)、連邦預金保険公社(FDIC)は今年3月、資本規制の近代化に向けた共同の意見募集を開始し、現在も業界から意見を募っている。

ただ、ウォール街が最近提出した書簡では、当局が検討している水準を上回る大幅な緩和を求めていることがうかがえる。

市場の関心は、規制緩和が銀行の貸出余力をどこまで押し上げるかに向かっている。Morgan Stanleyは、関連する規制変更がすべて実施された場合、米銀業界全体で最大1兆ドル(約150兆円)の追加的な資本余力が生じる可能性があると分析した。

この資金は、企業向けや家計向けの新規融資に回る可能性がある一方、自社株買い、増配、M&Aの原資になるとの見方もある。

こうした議論は米国にとどまらない。欧州連合(EU)の欧州委員会とイングランド銀行(BOE)は、米国での規制論議を踏まえ、バーゼルIII導入日程を延期した。欧州中央銀行(ECB)も、資本水準を維持しながら規制の簡素化を検討している。

日本でも、米国の最終判断を注視する姿勢が続く。専門家の間では、米大手銀行の資本負担が実質的に軽くなれば、各国も自国金融機関の競争力維持を目的に同様の規制調整を検討する可能性があるとの見方が出ている。

暗号資産市場への波及を指摘する声もある。銀行の資本規制が緩和されれば、金融市場全体の流動性が高まり、リスク資産への選好が強まる可能性があるためだ。

シカゴ連銀の研究では、緩和的な金融政策ショックがビットコイン価格と取引量の増加につながる傾向が示された。国際決済銀行(BIS)も昨年公表した研究で、グローバル流動性の変化が暗号資産のリターンと資金フローを左右する主要因だと分析している。

ステーブルコイン市場にも間接的な影響が及ぶ可能性がある。Tether(USDT)やCircle(USDC)など主要なステーブルコイン発行体は、準備資産の相当部分を短期の米国債で運用している。国債市場の流動性が改善すれば、裏付け資産の運用安定性が高まるとの見方がある。

業界では、当局がウォール街の要請をどの水準まで受け入れるかが、金融市場全体を左右する重要な変数になるとみられている。米国の資本規制見直しが大幅緩和に踏み込めば、銀行の貸出余力、米国債市場の流動性、リスク資産への投資心理まで幅広く影響する可能性がある。意見募集の行方と当局の最終判断に、市場の注目が集まっている。

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