OpenAIとAnthropicが中国市場での直接展開を控える中、MicrosoftがAzureを通じて中国の大手テック企業にGPTモデルを供給し、米中AI競争の接点となっていることが分かった。
暗号資産メディアのCryptopolitanが18日(現地時間)に報じたところによると、ByteDance、Ant Group、Tencent、Meituanなどの中国大手テック企業は、MicrosoftのクラウドAIサービス経由でOpenAIのモデルを利用している。OpenAIとAnthropicが中国企業への直接提供を見送る中、Microsoftが事実上その空白を埋めている格好だ。
OpenAIとAnthropicは、知的財産の流出やモデルの不正利用に対する懸念を理由に、中国企業へ直接サービスを提供していない。一方、MicrosoftはOpenAIとの契約に基づき、海外市場でのGPTモデルの販売条件を独自に定められる権限を持つという。
中国市場での需要は急拡大している。TikTokの親会社ByteDanceはここ数年、Microsoftにとって最大級のAI顧客の一つとされ、業界ではAIおよびクラウドサービスに年間10億ドル超を投じているとみられている。
Microsoftの中国向けAI関連売上も大きく伸びている。2025会計年度の中国AI事業は前年比で約3倍に拡大し、その前年度も400%増だったと伝えられている。
もっとも、中国事業の構成比はなお限定的だ。Microsoftのブラッド・スミス副会長は米議会で、2024年時点の中国事業売上高が全社売上高の約1.5%にとどまると説明した。それでも社内では、中国市場を戦略上重要な市場と位置付けているという。前最高商務責任者(CCO)のジャドソン・アルトホフ氏はかつて、同社を「米西海岸のAIイノベーション拠点と中国東海岸をつなぐ唯一の事業者」と表現した。
一方で、この構図は安全保障と統制の面で課題もはらむ。OpenAIは、中国企業がGPTの出力結果を使って自社AIモデルを学習させる、いわゆる「蒸留(distillation)」を警戒している。報道によれば、Microsoftに対し、中国の顧客がGPTの応答を競合モデルの開発に転用できないよう、水面下で対策強化を求めたという。
蒸留は、大規模モデルが生成した出力を活用して、比較的小規模なモデルを学習させる手法を指す。巨額の研究開発費をかけずに高性能モデルを構築できる可能性があるとして、業界で注目されている。
Microsoftはリスク低減策として、中国の顧客がGPTモデルにアクセスする際、中国国内のサーバーではなく、シンガポールなど海外のデータセンターを利用させているという。自動モニタリングで利用パターンを監視し、個人開発者より既存の法人顧客を中心に提供しているとも説明した。ただ、専門家は、こうした措置だけで蒸留を完全に防ぐのは難しいと指摘する。モデルが生成したデータは、さまざまな形で再利用され得るためだ。
Anthropicは中国関連の供給網に対し、より慎重な姿勢を維持している。現時点でAnthropicのモデルは、Microsoftの中国向けAI製品群には含まれていない。報道では、JP Morganが利用規約を精査した上で、香港の従業員向け社内承認済みAIツールの一覧からClaudeを除外し、Goldman Sachsも同様の対応を取ったとされる。最近では、ハワード・ラトニック米商務長官が、中国とロシアの軍・情報機関による利用の可能性を懸念し、Anthropicに一部モデルの海外供給停止を求めたとも伝えられた。
市場では足元、コスト競争力がAIモデル選定の新たな軸として浮上している。米国の開発者やスタートアップの間では、DeepSeek、XiaomiのMiMo、MiniMaxなど、中国製AIモデルへの関心が高まっている。
AI性能の分析機関による評価では、これらのモデルは高い性能を維持しながら、より低いコスト構造を実現しているという。サンディエゴのある開発者は、AnthropicのClaudeで1時間のコーディング作業を行うと約10ドルかかる一方、DeepSeekは50セント未満で済むと説明した。米スタートアップLindyの創業者も、DeepSeekへの切り替えによって数百万ドル規模のコストを削減したと語った。
Microsoftもこうした流れを踏まえている。同社は、OpenAIとAnthropicのモデルで動く企業向けAIエージェントサービスについて、低コストの推論エンジンとしてDeepSeek-V4ベースのモデルを試験しているとされる。
中国政府もAI普及策を加速している。中国商務部は年初、消費財やサービス産業全般へのAI導入を促す新たな17の政策を打ち出した。電子機器を単機能中心の製品から知能化機器へ転換し、ヒューマノイドロボット産業を育成することが主要目標だ。専門家は、AI競争が単なる性能競争を超え、価格、供給網、流通戦略を含む総合競争へ広がっているとみている。