ロボタクシーはタクシーや配車サービス市場を再編する可能性がある一方、米国で自家用車を本格的に代替するのは容易ではない――。こうした見方が示された。自動運転で運転手を不要にできても、コストや利便性、空車走行に伴う非効率を解消できなければ、自家用車より魅力的な選択肢にはなりにくいという。
米電気自動車メディアのCleanTechnicaが6月16日付で伝えたところによると、ロボタクシーを巡る争点の中心は技術力よりも経済性にある。業界では、自動運転の商用化で配車サービスの料金が大きく下がり、個人所有の車を代替できるとの期待がある一方、運転手コストがなくなっても自家用車を大きく下回る水準まで安くなるとは限らないとの見方もある。
CleanTechnicaの読者で、関連市場を長期に分析してきたMatthew2312は、米国では配車サービスやタクシー、配送、レンタカーなどを含む「移動のサービス化」モデルがすでに広く浸透しており、市場規模や成長余地もある程度見えていると説明した。そのうえで、自動運転の導入によって新たな需要が爆発的に拡大するとの前提は、なお実証されていないと指摘した。
Matthew2312は、新車を購入して5年間使った場合、購入費、保険料、維持費などを含む総コストは1マイル当たり約0.75~1ドルになると試算した。これに対し、足元のUberやWaymoの料金水準から運転手コストだけを差し引いたとしても、最終的な価格は自家用車と大差ない水準にとどまる可能性が高いと分析した。
また、米国の消費者に自家用車を手放させるには、ロボタクシーの料金を1マイル当たり0.50~0.70ドルまで下げる必要があると主張した。一方、事業者が採算を確保するには、現実的には1マイル当たり0.80ドル以上が必要になる可能性が高く、この水準の両立は容易ではないとみている。
課題を複雑にしているのは、自動運転の恩恵がロボタクシーだけに限られない点だ。自動運転が広く普及すれば、個人所有の車も家族の送迎や予定に応じた移動を自律的にこなせるようになる。このため、家庭は保有台数を減らしながら、現在に近い利便性を維持できる可能性があるという。
利便性の面でも、ロボタクシーが自家用車に対して明確な優位を持つとは言い切れない。自家用車は必要な時にすぐ使えるのに対し、ロボタクシーは配車して到着を待つ必要がある。車内に私物を常時置いておくような使い方もしにくい。
とりわけ問題視されるのが空車走行だ。自家用車であれば利用者がA地点からB地点へ直接移動すれば済むが、ロボタクシーは乗客を迎えに行く回送や、降車後に次の利用者を探す移動が発生する。こうした空車走行は、そのまま運営コストの上昇要因になる。
例えば、ロボタクシーのコストが1マイル当たり0.50ドル、自家用車のコストが0.77ドルだったとしても、ロボタクシーが乗客を乗せるまでにより長い距離を走るなら、実質的な総コストはむしろ高くなり得るという。
交通渋滞も無視できない要素だ。別の読者であるイービは、米国の都市部では配車サービスの利用コストが1マイル当たり約2ドルである一方、個人所有車の保有コストは約0.75ドルだと分析した。運転手コストがなくなったとしても、経済性の面で自家用車を圧倒するのは難しいと主張している。
さらにイービは、配車サービスの拡大が都市部の渋滞を悪化させているとする研究は少なくないとし、ロボタクシーでも同様の問題が起こり得ると指摘した。個人所有車であれロボタクシーであれ、道路上を走る車両数そのものが増えれば、渋滞解消は難しいという見立てだ。
市場規模の見通しも限定的だ。Matthew2312は、現在と同程度かやや低い価格帯のロボタクシーであれば、有人タクシーを置き換えながら2035年までに約35万台規模へ成長する可能性があると予測した。料金が1マイル当たり1ドル以下まで下がれば、約50万台規模まで広がる可能性もあるとした。
ただ、米国で自家用車の大規模な代替が起こるとの見方には慎重だ。1マイル当たり0.70ドルの水準でも、大半の消費者は自家用車の保有をやめない可能性が高いとして、米国市場で年間の新規ロボタクシー導入が5万台以下にとどまる可能性もあると分析した。
CleanTechnicaは、ロボタクシーの「本当の競争相手」を見極める必要があると指摘する。ロボタクシーはタクシーや配車サービス市場では、コスト削減やサービス改善を通じて競争力を確保できる余地がある。一方、自家用車市場まで置き換えるには、料金水準、運用効率、交通渋滞といった課題を同時に解決しなければならないという。
このためロボタクシー産業は今後、既存のタクシー・配車サービス市場を再編する段階までは成長し得るものの、米国で一般的な移動手段である自家用車そのものを代替するには、なお相当の時間を要するとの見方が示されている。