中国人民銀行(PBOC)が、ステーブルコインの越境決済での利用拡大をにらみ、その影響を慎重に見極める姿勢を鮮明にした。国際通貨体制への波及も視野に、規制整備と国際協調の必要性を訴えている。
Cointelegraphによると、中国人民銀行研究局のワン・シン局長は17日(現地時間)、ステーブルコインが国際通貨体制や越境決済に及ぼす影響を綿密に点検する必要があると述べた。
ワン局長は、当局が新たに重点的に注視すべき分野としてステーブルコインを挙げた。ステーブルコインが越境決済でより大きな役割を担う可能性を踏まえ、これに対応する規制の在り方や国際的な調整・協力を検討すべきだとの考えを示した。
一方で、今回の発言はステーブルコイン支持や政策転換を示唆したものではない。中国の規制当局が、民間発行デジタル資産の対外決済への広がりに警戒感を強めていることを示す内容といえる。
ワン局長は、決済手段の「武器化」にも言及した。不確実性が高まり、決済が政治・外交上の手段として使われれば、通常の越境取引が不安定化しかねないと警告した。ステーブルコインが暗号資産市場内の決済手段にとどまらず、対外決済インフラと結び付く可能性を当局が意識していることがうかがえる。
中国はすでに、民間発行のデジタル資産に対する統制強化を制度面で進めている。人民銀行と7機関は2月6日、人民元連動型ステーブルコインと実物資産連動商品(RWA)の無断発行を禁止した。規制は中国国内外の機関に適用され、国内外で発行される人民元建ての商品も対象に含めた。発行には政府の承認が必要で、民間トークンより国家主導のデジタル通貨を重視する従来方針を改めて確認した措置と位置付けられる。
ワン局長は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)についても同様の問題意識を示した。CBDCが越境決済で果たす役割についても、より綿密な観察が必要であり、政策面での協調も進めるべきだと述べた。民間発行ステーブルコインに限らず、国家主導のデジタル通貨が国際決済網に組み込まれる場合でも、調整課題が広がり得るとの認識を示した形だ。
市場規模の拡大も、当局の警戒感を強める一因となっている。CEX.ioの集計によると、2026年第1四半期のステーブルコイン供給量は約80億ドル増え、初めて3150億ドルに達した。四半期中の取引規模は28兆ドルを超え、暗号資産市場全体の取引量の75%を占めた。一方でCEX.ioは、取引量全体の約76%がボットによるものだと推定している。
ステーブルコインの時価総額は一時、3220億ドルまで拡大した後、再び3150億ドル水準に戻った。供給規模と取引比率が急速に拡大するなか、中国は市場拡大そのものよりも、越境決済と国際通貨体制への波及を優先して見極める構えだ。今後は、民間発行ステーブルコインへの追加規制に加え、越境決済におけるデジタル資産とCBDCの管理の在り方が焦点となりそうだ。