AI半導体向け材料の供給力拡大が焦点となっている。写真=Shutterstock

Ajinomotoは、AI半導体のパッケージングに使う主要材料「ABF」について、現時点では2030年までの需要に対応できるとの見通しを示した。需給逼迫を背景にした値上げよりも生産能力の拡大を優先し、次期生産拠点の準備も進めている。オンラインメディアのGigazineが15日に報じた。

ABFは、半導体チップを実装するパッケージ基板向けの層間絶縁材。Ajinomotoは食品メーカーとして知られる一方で、この分野の主要サプライヤーでもある。AIチップ需要の急拡大を受け、サプライチェーンではチップ本体だけでなく、パッケージ基板や関連材料の供給力も重要性を増している。

ナカムラ・シゲオCEOは、1990年代のABF開発に携わった人物だ。現時点の見通しとして、2030年までは需要に対応可能と説明する一方、AI関連需要が想定を上回るペースで拡大した場合には、2030年以降の不確実性が高まる可能性があるとの認識も示した。

同社は、需給の引き締まりを背景にABF価格を単純に引き上げることには慎重な姿勢を取る。ナカムラCEOは、ABFは銅箔やガラス繊維を使わないため、ほかの基板材料に比べて原材料価格上昇の影響を受けにくいと説明した。ほかの材料の値上がりを理由にABFまで値上げすれば、顧客との関係を損なうおそれがあるとしている。

半導体業界では、すでに一部の基板材料で価格上昇が起きている。銅箔やガラス繊維のメーカーは、エネルギー価格や原材料費の上昇を理由に値上げに踏み切った。投資家の間では、AIブームを追い風にABFも値上げすべきだとの見方が出ていたが、Ajinomotoは増産で需要に応える方針だ。

同社は日本の中部地域で次期生産設備向けの用地を確保しており、新工場は2032年の稼働を見込む。ナカムラCEOは、顧客需要次第では前倒しの可能性もあるとした。今後のABF供給戦略では、価格よりも生産能力の拡充ペースが焦点となりそうだ。

もっとも、価格が完全に固定されているわけではない。Ajinomotoが使用する一部の有機溶剤では価格上昇が進んでおり、供給元が追加コストの転嫁に動く可能性がある。中東情勢の緊迫化は現時点で原材料調達に直接的な打撃を与えていないものの、樹脂原料や化学フィラーの供給不足リスクは残る。ナカムラCEOは「現時点で直接的な影響は確認していない」「調達先の分散がクッションになっている」と述べた。

技術面の変化も変数だ。先端チップの高度化に伴い、パッケージ基板は複雑化し、コストも上昇している。ナカムラCEOは、高付加価値化が進めばABF価格が上昇する可能性はあるとしつつ、過度な値上げはABFを使わない代替技術の開発を促しかねないと警戒感を示した。

代替材料の可能性は、現時点では限定的とみられる。一部ではガラスがABFの代替になり得るとの見方もあるが、アナリストのクオ・ミンチー氏は、2028年までにガラスがチップパッケージングに導入されたとしても、ABFを全面的に置き換えるのではなく併用が中心になるとみている。高性能ABFをすぐに代替できる材料が乏しい中、供給余力の確保は一段と重要になっている。

こうした状況を踏まえ、Ajinomotoは今後の真のボトルネックが材料価格ではなく、基板の生産能力にある可能性を意識する。ナカムラCEOは、ロボットなどの「フィジカルAI」でも高性能プロセッサーの採用が始まったと指摘し、AIはすでに日常の一部になっていると評価した。AI需要の拡大に対し、半導体基板の生産が追いつけるかどうかが、今後の業界課題として残る。

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