Standard Charteredは、ビットコインが今サイクルの底を打ち、暗号資産市場が持ち直し局面に入ったとの見方を示した。年末のビットコイン価格については10万ドルの予想を維持しており、流動性懸念、地政学リスク、現物ETFからの資金流出圧力がそろって後退しつつある点を主な根拠に挙げた。
15日付のDecryptによると、同行でデジタル資産リサーチを統括するジェフ・ケンドリック氏は、今月初めにビットコインが約5万9000ドルまで下落した局面を、今回のサイクルにおける底値と位置付けた。
ケンドリック氏は「冬は終わった。暗号資産の春の到来を歓迎する」と述べ、年末の目標価格10万ドルを据え置いた。足元の水準からは約70%高い計算になる。
同氏は、ここ数週間にわたり相場の重荷となってきた3つの要因が、同時に和らぎ始めていると指摘した。
まず、SpaceXの新規株式公開(IPO)は市場の流動性を吸収する要因として意識されていたが、上場に伴う需給の波が一巡すれば影響は薄れる可能性があるとした。SpaceX株のSPCXは13日の上場初日に19%上昇しており、配分を巡る競争が落ち着けば、ETF絡みの売り圧力も弱まるとの見方を示した。
地政学面では、中東情勢の緊張緩和が支援材料に挙がった。ドナルド・トランプ米大統領は12日夜、イランとの戦争が終結したと宣言し、主要7カ国首脳会議(G7)を前に米国とイランの和平合意への期待が広がった。これを受け、原油価格は1バレル81ドルまで下落し、3月初旬以来の低水準となった。
資金フローにも変化が出ている。ビットコイン現物ETFは5月中旬以降、約50億ドルの資金流出が続き、過去最大級の売り局面となっていたが、13日は8600万ドルの純流入に転じた。1カ月ぶりの大幅な流入となる。
一方、同日のイーサリアム現物ETFは500万ドルの純流出だった。こうした動きを踏まえ、ケンドリック氏は「底値はすでに形成されており、いまの価格は後から見れば絶好の買い場だったと振り返ることになる」と評価した。
市場も週末にかけて反応した。ビットコインは週間で4.72%上昇し、6万6500ドル台まで反発した。イーサリアムは7%高の1780ドル、ソラナは10%高の73ドルまで上昇。アルトコインではZcash(ZEC)が28%、Worldcoin(WLD)が23%、NEAR(NEAR)が18%それぞれ上げた。
個別銘柄では、Zcashが強含んだ。AnthropicのMythosを活用した監査の結果、約1週間前に確認された脆弱性以外に追加の問題は見つからなかったと発表したことが材料視された。
Aerodromeも、「予測配分」アップグレードの導入を受けて15%上昇した。手数料が集まるプールを後追いするのではなく、今後流動性が必要になる区間を先回りして見極める流動性提供者に報酬を与える仕組みとしている。
もっとも、今回の反発シグナルだけで相場のトレンド転換を断定するのは早いとの見方もある。SpaceX上場が流動性に与える影響がどの程度残るのかはなお見極めが必要で、イランを巡る和平交渉にも不確実性が残る。ETFの資金動向も短期的な振れが大きい。
それでも、直近の下落を主導してきた流動性、地政学、ETF資金流出という3つの懸念が同時に和らぎ始めた点は、市場の関心を集めている。ビットコインが6万5000ドル台を回復するなか、主要アルトコインでも10~20%台の反発が広がっており、リスク選好が戻るかどうかが当面の焦点になりそうだ。