写真=LG Energy Solutionのグリッド向けESS製品

電気自動車(EV)需要の減速が、エネルギー貯蔵システム(ESS)市場にも波及している。稼働率が落ちたEV向け電池ラインをESS向けに振り替える動きが広がり、韓国電池大手3社の生産能力は市場の需要拡大を大きく上回るペースで積み上がっている。増産を支えているのは需要の強さというより、工場稼働率の維持だ。

業界によると、LG Energy Solution、Samsung SDI、SK Onの3社による今年のESS生産能力の増加分は約109GWhに達する見通し。一方、市場出荷の増加分は50GWhを下回ると予想されている。生産能力の伸びは、実際の需要拡大の2倍を超える計算になる。

この109GWhの増加分のうち、実需で吸収されるのは半分前後にとどまる可能性が高い。残る分は販売先を確保できず、在庫として積み上がるか、工場の稼働率低下につながる公算が大きい。

そもそも今回の能力拡張は、需要見通しに基づく投資というより、EV販売の鈍化で稼働率が低下した電池工場を遊休化させないための対応という側面が強い。このため、需給ギャップは縮小よりも拡大に向かうとの見方が優勢だ。

韓国3社の主力市場である米国でも、同様の兆候が出ている。米国エネルギー貯蔵連合の報告書によると、今年の米国ESS市場の年間プロジェクト需要は60GWhと推定される一方、現在の稼働能力に年内の追加分を加えた生産能力は146GWhに達する見込みだ。すべての設備が計画通り稼働すれば、供給は需要を約86GWh上回ることになる。

もっとも、この86GWhという差は全工場が100%稼働する前提で算出されたものだ。実際の超過幅は、これより小さくなる余地がある。

Intertek CEAの分析では、公表済みの能力ベースでみた2026年の米国市場は、懸念外国団体(FEOC)基準に適合する生産能力が約10%上振れすると見込まれている。適合分の80%以上は韓国系サプライヤーが占めるという。韓国のEV電池工場の稼働率が歴史的に70〜80%水準だった点を踏まえると、実際の供給超過の規模は、韓国企業が設備稼働をどの程度の速さで引き上げるかに左右される。

一方で、設置ベースの需要そのものは拡大を続けている。ハナ証券によると、4月の世界ESS新規設置量は前年同月比18%増の17.7GWhだった。このうちグリッド向けは12.8GWhと27%増え、全体の成長をけん引した。家庭や工場など需要地に直接設置される分野は4.9GWhで、前年並みにとどまった。

1〜4月累計の新規設置量は88.1GWhと、前年同期比31%増だった。グリッド向けは66.4GWhで、40%増加した。

ただ、需要拡大の中心が中国に偏っている点は懸念材料だ。4月の中国の新規設置量は55%増の9.4GWhと、世界全体の半分超を占めた。CATLやBYDなどの中国勢は、比較的安価なリン酸鉄リチウム(LFP)電池をベースにESS増設を主導し、価格競争力を前面に打ち出している。

中国国内で吸収しきれない物量が輸出に回る動きも重なり、世界的な余剰在庫の積み上がりにつながっている。

これに対し、韓国3社の主戦場である米国市場は減速感が強い。4月の米国の新規設置量は前年同月比67%減の1.1GWhにとどまり、グリッド向けは0.4GWhで86%減だった。1〜4月累計では12.4GWhと11%増を維持したものの、月次では鈍化の兆しが出ている。

欧州はこれと対照的だ。4月の新規設置量は39%増の1.6GWh、1〜4月累計でも68%増の10.2GWhと、相対的に堅調に推移した。

◆EVライン転用で膨らむ「需要先行でない増産」

長期的にみれば、ESS市場の拡大基調そのものは変わらないとの見方が多い。ただ、少なくとも今年前後は、サプライチェーン全体で価格競争の激化と構造調整が避けられない局面に入ったとの分析が出ている。焦点は、韓国電池3社がEV不振をESSで補う戦略を、収益性を維持しながら進められるかどうかにある。

米国のインフレ抑制法(IRA)とFEOC規制によって中国製電池の参入が制約されるなか、韓国3社は米国ESS市場への注力を強めている。規制の追い風で韓国企業が米国供給の相当部分を担うとの期待がある半面、転用によって膨らんだ供給量そのものが米国需要を上回れば、韓国勢同士の価格競争に発展しかねないとの懸念もある。

収益性も大きな変数だ。生産能力が需要を大きく上回れば、工場は稼働を落としても固定費負担を避けられない。このためメーカー側では、単価を引き下げてでも販売量を確保しようとする誘因が強まりやすい。業界関係者は「稼働率維持を優先した押し込み販売が深刻化する可能性が高い」と指摘した。

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