Red Hat Koreaのイ・ミンソン常務は、企業のIT運用自動化を高度化するには、単にツールを増やすだけでは不十分だと指摘し、タスク、イベント、AIの3つの自動化方式を状況に応じて組み合わせる「マルチモード自動化」の必要性を訴えた。
同氏は5月28日午後、ソウル・チャムシルのロッテワールドタワーでRed Hat Koreaが開催した「Red Hat Ansible Automate 2026」で講演した。グローバル企業では、インフラ近代化の課題として依然「ITインフラ運用自動化の高度化」への関心が高いとした上で、企業が直面する課題とRed Hatの対応方針を紹介した。
イ・ミンソン常務は「IT運用の効率化を目的に自動化を導入しても、かえって運用が複雑になったという声は多い。マルチモード環境で状況に応じて自動化を使い分ける最適化戦略が必要だ」と述べた。
Red Hat Ansibleは、複雑なITインフラやアプリケーション展開をコードで自動化するオープンソースの基盤だ。Red Hatは、企業向けに最適化した「Ansible Automation Platform」を軸に、エンタープライズ自動化市場の開拓を進めている。
同氏によると、企業では自動化ツールの導入が進む一方、ツールと運用が分断され、十分に活用し切れていないケースが少なくない。統合そのものも想定以上に難しく、社内で技術、組織、運用方式がばらばらなため、実際の一元化まで進まない例も多いという。課題解決のために自動化ツールを導入した結果、管理対象のツールだけが増える事態にもなりかねない。
こうした課題への対応策として、同氏が示したのが「マルチモード自動化」だ。これは、タスクベース、イベントドリブン、AIドリブンの3方式を、業務や運用状況に応じて組み合わせて活用する考え方を指す。
タスクベース自動化は、現在の自動化業務の約80%を占める一般的な手法だ。セキュリティパッチの一括適用、ユーザーアカウントの作成、標準設定の配布など、予測可能で反復的な作業の自動化に向く。
同氏は、インフラ管理ソリューション「Red Hat Satellite」とAnsibleを組み合わせた例を紹介した。Satelliteがセキュリティ脆弱性を自動検知すると、Ansibleがパッチ適用を自動で実行し、人手を介さずに数千台のサーバへ迅速かつ一貫して反映できると説明した。
イベントドリブン自動化は、特定のイベント発生時に、あらかじめ定義した運用ポリシーに基づいて即時対応する方式だ。
例えば、運用中のOSがハングし、担当者がすぐに対応できなければ、障害が翌朝まで長引く場合がある。監視システムがOSハングを検知した時点で、Ansibleが自動的に再起動するよう設定しておけば、人手を介さずに即応できるという。同氏は、既知で反復的な障害であれば、AIを使わなくてもイベントドリブン自動化だけでAIOpsに近い運用効果を得られるとした。
3つ目がAIドリブン自動化だ。これは、AIが分析や判断だけでなく、実行まで担う形態を指す。
ただ同氏は、「AIは問題の分析や判断には強い一方、実システムに直接接続して作業を実行する段階ではなお制約がある」と説明した。そのため、AIの判断結果に基づく実行部分は、イベントドリブン自動化が担う構成が必要だとし、両者を組み合わせることで初めてエージェンティックAI型の自動化効果を引き出せると述べた。
AIベースの自動化では、ガバナンスの確保も重要になる。同氏は、AIシステムに直接権限を与えるのではなく、自動化レイヤーを中間に置き、AIが実行できる機能を定義した上で監視する構造が必要だと指摘した。あわせて、自動化レイヤーによって責任の所在と監査体制を明確にすべきだとした。
イ・ミンソン常務は講演の中で、企業環境で自動化を定着させるには、タスクベース、イベントドリブン、AIドリブンの3方式を適材適所で使い分けながら連携させる設計が重要だと繰り返し強調した。重要なのは各モードを個別に運用することではなく、状況に応じてどこまで有機的に連携できるかだとし、それがIT運用の競争力を左右すると述べた。さらに、Ansible Automation Platformは、タスク、イベント、AIの3つの自動化モードを単一プラットフォームで支援すると説明した。