STT GDC Koreaのホ・チョルフェ代表は、AIインフラはIT部門だけの判断事項ではなく、企業の競争力を左右する経営課題だと強調した。STT GDCがアジア6カ国の644社を対象に実施した調査では、AIを競争優位につなげる「先導」段階に到達した企業は1%にとどまった。
ホ代表は「AIインフラはデジタル主権と国家競争力を左右する」とした上で、「AIのビジョンがいかに優れていても、インフラ戦略が伴わなければ成果にはつながらない。インフラはもはやIT部門の検討課題ではなく、戦略的な差別化を生む中核要素だ」と述べた。同領域は経営陣が主体的に関与すべきだとの認識を示した格好だ。
STT GDCは今回、AIインフラの準備度に関する調査結果を公表した。評価は「戦略」「組織の準備度」「データガバナンス」「プラットフォーム水準」「運用戦略」の5領域で実施し、企業を「探索」「構築」「統合」「先導」の4段階に分類した。
調査結果によると、「探索」は12%、「構築」は71%、「統合」は16%だった。AIを実際の事業競争力へと結び付ける「先導」段階に達した企業は、全体の1%にとどまった。
ホ代表は「AI導入に着手した企業は多いが、実際に事業へ組み込み、競争力の創出にまでつなげている企業はごく一部だ」と指摘した。
一方で、企業がAI導入で直面する構造的な課題も浮き彫りになった。調査では56%が、予算制約や投資対効果(ROI)の測定に苦慮していると回答した。インフラ面の課題も大きいという。
ホ代表は「AIワークロードは今後3年で72%増加する見通しだが、コンピューティング、ストレージ、ネットワークの各インフラがそれに追い付いていない」と説明した。ネットワークのボトルネックを経験している企業は82%に達したといい、「GPUを確保しただけでAIをすぐに活用できるわけではない。ワークロードに見合った環境整備に加え、運用の専門性やガバナンスを含めた総合的な準備が欠かせない」と述べた。
国別では、韓国はアジア市場の中でも比較的高いインフラ準備度を示した。「構築」が67%、「統合」が30%、「先導」が2%で、いずれも全体平均を上回った。
また、韓国については、AIモデル保有数で米国、中国に次ぐ世界3位に位置することに加え、人口当たりのAI特許件数やAI利用率の伸びでも世界トップ水準にある点を前向きな指標として挙げた。ホ代表は「韓国はすでに、AIが実際に収益化につながることを示した市場だ」とし、「もはや導入や実証の段階ではなく、統合・先導段階へ移行しつつある」と評価した。
その一方で、韓国企業が拡大局面でさまざまなボトルネックに直面していることも明らかになった。AIインフラの選定ではセキュリティと安定性を最重視する一方、運用拡大の過程では専門人材の不足や運用能力の未成熟さが課題になっているという。
さらに、インフラ構築には最低でも12~18カ月を要するのに対し、AI技術は6~9カ月単位で急速に変化する。このため、物理インフラを増強するだけでは変化のスピードに対応しにくい構造的な問題があるとした。
ホ代表は、先導企業に共通する特徴として3点を挙げた。インフラを集中型ではなく分散型で設計していること、サステナビリティとエネルギー効率を初期設計から織り込んでいること、戦略的パートナーシップを積極的に活用し、柔軟に拡張できる体制を整えていることだ。
その上で、企業がAIインフラを検討する際に答えるべき中核的な問いとして、「どこに構築するか」「どう運用するか」「誰が運用を担うか」の3点を提示した。ホ代表は「この3つの問いへの答えが、企業が次の段階に進めるかどうかを左右する」と述べ、「競争力はアルゴリズムだけで決まるのではない。インフラと運用能力、そしてその上にある戦略的な選択が重要になる」と強調した。