中国最高人民法院は27日、暗号資産や越境金融、AIに関する事件について、裁判ルールの研究を進める方針を明らかにした。暗号資産に対する禁止政策は維持したまま、デジタル経済分野で増える紛争への司法対応を具体化する動きとみられる。
ブロックチェーンメディアのCointelegraphによると、最高人民法院はデジタル経済分野の紛争処理体制の整備の一環として、暗号資産、越境金融、AI関連事件を対象に裁判ルールの研究を進めるとした。
今回の動きは、暗号資産政策の緩和というより、禁止下でも発生している投資損失や詐欺、資産を巡る係争に対応するための司法基準づくりと受け止められている。中国では暗号資産の取引とマイニングが全面的に禁止されている一方、関連する民事・刑事上の紛争は続いており、裁判所として責任の範囲や損害賠償の判断基準をより明確にする必要があるためだ。
最高人民法院の司法委員会委員であるリウ・グイシャン氏は記者会見で、「暗号資産や越境金融など新たな類型の事件に関する裁判ルールを深く研究する」と述べた。インサイダー取引や相場操縦に伴う民事賠償についても、できるだけ早期に司法解釈を整備する考えを示した。
検討対象には、AIやデータの権利を巡る紛争も含まれる。最高人民法院は、AI生成コンテンツ、データの所有権、データ取引の過程で生じる権利衝突に関する司法上の保護ルールについても研究を進めている。暗号資産やAIに関連する知的財産権紛争、データの権利訴訟で、より具体的な判断基準が示される可能性がある。
こうした動きの背景には、中国に関係するとされる大規模な暗号資産犯罪事件の広がりもあるとみられる。カンボジアのPrince Group創業者チェン・ジー氏は今年初め、カンボジアで逮捕された後に中国へ送還され、いわゆる「ピッグ・ブッチャリング」詐欺組織を運営した疑いが持たれている。米司法省は、チェン・ジー氏に関連する組織から約150億ドル相当のビットコインを押収したと発表している。暗号資産を使った越境犯罪や資金移動を巡る事件が拡大するなか、司法基準整備の必要性が高まっている。
一方、中国の暗号資産に対する基本政策に変更はない。中国人民銀行は2013年に金融機関によるビットコイン関連サービスを禁止し、2021年には暗号資産取引、マイニング、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)を全面的に禁じた。今年2月にも、無許可のオフショア人民元連動ステーブルコインと、未承認のRWAトークンの発行を禁止しており、規制を継続している。
その一方で、中国は国家主導のデジタル通貨の普及を進めている。当局は最近、商業銀行がデジタル人民元の保有顧客と一部の利益を共有できるよう認めた。中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタル人民元を、デジタル法定通貨の新たな枠組みとして拡大する狙いがある。民間のステーブルコインや海外発のデジタル資産を抑制する一方、国家管理型のデジタル通貨を広げる構図が続いている。
今回の方針は、暗号資産を制度圏に取り込むシグナルというより、禁止政策の下で増えるデジタル資産・AI関連紛争について、裁判所の判断基準を整える取り組みといえる。中国の司法当局が今後、具体的な司法解釈や責任基準をどのように示すかは、世界の暗号資産・AI業界にも影響を与える可能性がある。