NVIDIAは台湾での年間投資額を1500億ドル(約2兆2500億円)に引き上げ、現地に新本社を建設する。台北北部に新拠点を整備し、TSMCをはじめとするサプライチェーン各社との協業を拡大する方針だ。
27日、CNBCなど海外メディアが報じた。ジェンスン・フアンCEOは、台湾が人工知能(AI)革命の中核であり続けるため、現地投資を拡大すると表明した。これを受け、台湾株式市場の加権指数(TAIEX)は同日1.7%上昇し、過去最高値で取引を終えた。
関連銘柄では、TSMCが1.3%、MediaTekが8.8%、Delta Electronicsが7.2%上昇した。NVIDIAは半導体設計を担い、TSMCが生産を手掛ける。NVIDIAは今年、Appleを抜いてTSMCの最大顧客になると見込まれている。
NVIDIAは今年末にも、台北北部で新オフィス拠点「Constellation」の建設に着手する計画だ。2030年の開設を予定し、収容人員は4000人。現在の台湾人員の約4倍に当たるという。フアンCEOは、新拠点について、AIイノベーションを主導し、台湾の技術・製造拠点としての役割を支える施設になるとの見方を示した。
フアンCEOは、台湾がサプライチェーン全体で担う役割の大きさも強調した。チップの生産からパッケージング、システム製造までが台湾に集積していると説明し、「AIスーパーコンピュータが生まれた場所もここだ」と述べた。さらに、4〜5年前の台湾での年間支出は100億〜150億ドル(約1500億〜約2250億円)だったが、足元では1000億ドル(約1兆5000億円)に達しており、今後は1500億ドルまで増えるとの見通しを明らかにした。
今回の投資は、ドナルド・トランプ米大統領が進めてきた米国中心のAI生産拠点戦略とは別の動きとして注目される。NVIDIAは2025年4月、初めて米国内でAIチップの生産を開始し、米国での製造拡大方針を打ち出していた。当時フアンCEOは、「世界のAIインフラのエンジンが初めて米国で作られている」と述べ、米国生産が需要対応とサプライチェーン強靱化に資すると強調していた。
一方で、今回の発表は、実際のサプライチェーンの中核がなお台湾にあることを改めて示す内容でもある。NVIDIAは米国内の生産拡大を進める一方、先端パッケージング能力と主要協力企業が集積する台湾のエコシステムにも重点投資する。台湾拠点を軸にTSMCとの協力を拡大し、Foxconn、Wistron、Quanta ComputerなどAIサーバーやインフラ構築を担うパートナーとの連携も強化する方針だ。
背景には、急拡大するAIインフラ需要がある。ビッグテック各社は今年、AIインフラに総額7500億ドル(約112兆5000億円)を投じる計画で、その大部分がデータセンター向けチップに向かう見通しだ。NVIDIAは次世代AIシステム「Vera Rubin」の投入も控える。フアンCEOはこれを「世代が変わる飛躍」と位置付け、「歴史上最大のインフラ構築が始まる」と語った。NVIDIAは、Vera Rubinのライフサイクル全体を通じて供給網の制約が続く可能性があるとみている。
不確実性も残る。フアンCEOは最近、米国のシンクタンクのイベントで、対中輸出規制がすでに相当程度で逆効果を生んでいると指摘した。NVIDIAも投資家に対し、中国市場の大半をHuaweiに明け渡したと認めている。現在、データセンター向け半導体は関税の対象外だが、米政府は半導体輸入が国家安全保障に与える影響を調査しており、結果次第では追加関税が課される可能性がある。米通商代表部は当面、新たな関税賦課の計画はないとしているものの、半導体生産の米国回帰に向けて関税を活用する方針は維持している。
NVIDIAは米国投資の拡大で関税リスクの抑制を図りつつ、AIサプライチェーン拡大の実務面では台湾を中核拠点に据える構えだ。