写真=27日の記者懇談会でサイバーセキュリティ施策「Daybreak」について説明するOpenAIのジェイソン・クォン最高戦略責任者(CSO)(DigitalToday)

OpenAIは27日、政府・公共機関向けのサイバー支援プログラム「GTAC(Government Trusted Access for Cyber)」を日本と韓国で展開すると発表した。アジアでの導入は初めて。米国、カナダに続く展開となり、参加機関には最新のサイバー特化AIモデルを提供する。

同日、ソウル市瑞草区のJWマリオットホテルで記者懇談会を開き、こうした内容を盛り込んだ「韓国サイバー・アクション・プラン」を公表した。ジェイソン・クォン(Jason Kwon)最高戦略責任者(CSO)は、計算資源の面でもAnthropicの「Project Glasswing」より幅広いアクセスを提供できるとしたうえで、「狙いは、信頼できる防衛主体に強力なAIツールを持たせることだ」と述べた。

GTACは政府・公共機関向けの枠組みで、民間向けの「TAC(Trusted Access for Cyber)」とは別制度となる。クォンCSOは「公共機関には民間とは異なる要件がある場合が多く、別の手続きを適用する」と説明した。GTAC、TACの両プログラムは、いずれもOpenAIのサイバーセキュリティ施策「Daybreak」の下で運用する。

GTACに参加する機関は、OpenAIの最新のサイバー特化AIモデルを利用できる。主な用途は脆弱性の発見やパッチ適用支援だ。クォンCSOは「特定のモデルを固定的に提供するのではなく、常に最新モデルを使える仕組みだ」と述べ、今後投入する後継モデルについても、Daybreakを通じて信頼できる防衛主体に可能な限り早く提供する考えを示した。

韓国の機関によるGTACの利用については、なお権限付与の手続きが残っている。手続き完了後は直ちに活用できるという。OpenAIは18日、サーシャ・ベイカー国家安全保障政策総括の訪韓に合わせ、科学技術情報通信部、外交部、行政安全部、金融委員会、国家AI戦略委員会、韓国インターネット振興院(KISA)などを対象に、最新のサイバー特化モデルのデモを実施した。26日にはクォンCSOがリュ・ジェミョン科学技術情報通信部第2次官と会談し、サイバーセキュリティ分野での協力を正式化した。実務はKISAが担う。

OpenAIは、韓国での公共分野での展開拡大に関連し、AIは公共財としての性格を強めつつあるとの見方も示した。前日には韓国水資源公社と気候変動・水災害対応に関するAI協力の覚書(MOU)を、技術保証基金とはAIベースの技術評価システム構築に向けたMOUをそれぞれ締結した。クォンCSOは「より多くの人に、より低コストでAIを届けることが長期目標だ」と述べ、「AIは個人や企業の生産性向上にとどまらず、国家が依拠するシステム全般に広がる段階に入っている」と語った。

韓国AI安全研究所とは、安全性評価や共同研究など実務面での協力を続ける方針だ。クォンCSOは「米国と英国のAI安全研究所との連携経験を踏まえ、韓国がAIの信頼性と安全性に関する能力をより迅速に構築できるよう支援したい」と述べた。

AnthropicがMythos基盤で運営するサイバーセキュリティ協議体「Project Glasswing」には、現在約50社が参加しているとされる。クォンCSOは「サイバー能力は1年後には現在よりはるかに広く普及しているはずだ」とし、「悪意ある行為者に先んじて、信頼できる防衛主体がその能力を確保しなければならない」と強調した。OpenAIは数日以内に、TACに関する成果も別途公表する予定だ。

競合環境については、消費者向け市場でGoogle Geminiを主要な競合として挙げた。一方でAnthropicについては「消費者領域には注力していないとみている」との認識を示した。エンタープライズ市場ではCodexの伸びが大きく、これに伴うAPI利用の増加が売上を押し上げているという。

データセキュリティに関しては、2つの対応策を示した。クォンCSOは「韓国ではすでにデータ・レジデンシーを提供しており、処理データは国内にとどまる」と説明。加えて「一部顧客には、データ自体を保存しないオプションも提供している」と述べた。TACとGTACはいずれもトークン課金で、料金はOpenAIの営業チームと個別に協議して決める。

韓国では、民間向けTACを約1カ月半前に開始した。クォンCSOは「韓国の主要企業複数社と協議を進めている」としたが、具体的な社名は明らかにしなかった。

大規模AIインフラ計画「Stargate」の韓国での構築については、「SK、Samsungと生産的な議論が進んでおり、順調に進捗している」と述べた。

また、クォンCSOは韓国市場での利用動向にも言及した。ChatGPTの世界の週間アクティブユーザー数(WAU)は9億人、企業顧客は100万社超に達しているという。韓国はWAU、企業顧客数、有料購読の各指標で世界トップ10に入る。コーディング支援ツール「ChatGPT Codex」の韓国におけるWAUは年初比で10倍に増加し、Codexアプリ公開後は国内の日次利用量が30倍超に拡大した。韓国はCodex活用度でも世界トップ5に入るという。韓国内のCodexリクエストの過半は、コーディングではなく、文書作成、分析、リサーチ、運用などの非開発業務で占められている。

クォンCSOはさらに、韓国はAIトランスフォーメーションを進めるうえで有力な市場だとの認識を示した。技術を素早く取り入れる文化に加え、公共部門の積極的なAI受容姿勢、半導体からスタートアップまでを備えたフルスタックの産業基盤をその理由に挙げた。そのうえで「韓国はOpenAIにとって非常に重要な国だ。OpenAIもまた、韓国のAIトランスフォーメーションにおける重要なパートナーになれると信じている」と語った。

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