Teslaのロボタクシー専用車両「Cybercab」が、認証ベースで165Wh/miの電費を記録した。公表されている電気自動車(EV)の中でも最高水準の効率で、業界では車両性能そのものに加え、将来のロボタクシー事業の採算性を占う指標として注目が集まっている。
EV専門メディアのElectrekが22日(現地時間)に報じたところによると、Teslaで車両エンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるラース・モラヴィ氏は、Cybercabの公式認証電費が165Wh/miだったと明らかにした。目標値や試算ではなく、Teslaが認証取得に当たって確認した数値だという。
比較すると、Lucid Air Pureの後輪駆動モデルは約230Wh/mi、Tesla Model 3の後輪駆動は240Wh/mi、Hyundai MotorのIONIQ 6 SE後輪駆動は約241Wh/miとされる。Cybercabは同じ距離を走るのに必要な電力量を大きく抑えていることになる。
ただ、Cybercabを一般的な乗用EVと単純に比較するのは難しい。ステアリングホイールやペダルを持たない2人乗りのロボタクシー専用車として設計されているためだ。
車体は空気抵抗の低減を重視したティアドロップ形状を採用し、バッテリーパック容量も50kWh未満に抑えたとされる。Electrekは、「史上最高効率のEV」という表現は技術的には成り立つ一方で、「オートバイの燃費をセダンと比べるような面もある」と評価した。
Teslaはこうした設計により、50kWh未満の比較的小型なバッテリーパックでも、約300マイルの航続距離を確保できるとしている。
一般的な市販EVは4〜5人乗りのシート構成や荷室、ステアリング、ペダルに加え、各種の衝突安全基準を満たす必要がある。これに対しCybercabは、そうした要件を大幅に絞り込み、最小限のコストで2人の乗客を運ぶことに特化したとの見方が出ている。
このため業界では、今回の電費の良さは車両の商品性以上に、ロボタクシー事業の経済性を測るうえで意味が大きいと受け止められている。配車型の移動サービスでは、エネルギーコストが主要な運営費の一つになるためだ。
米国の平均電気料金である1kWh当たり約0.16ドル(約24円)で試算すると、Cybercabのエネルギーコストは1マイル当たり約0.026ドル(約3.9円)となる。Tesla Model 3は約0.038ドル(約5.7円)、Hyundai MotorのIONIQ 5は約0.048ドル(約7.2円)とされ、差は小さく見えても、数十万マイル以上を走る大規模フリートでは長期的に大きなコスト差につながる可能性がある。
小型のバッテリーパックも経済性の面で利点がある。電池コストを抑えやすいうえ、充電時間の短縮にもつながるためだ。Teslaは以前、Cybercabの価格目標を約3万ドル(約450万円)としており、高い電力効率はその実現を支える要素の一つとみられている。
生産はすでに始まっている。Teslaは4月、米Gigafactory TexasでCybercabの生産を開始したと発表した。ただ、立ち上がり当初の増産ペースは限定的になるとの見方が強い。
背景には、自動運転の事業化になお課題が残ることがある。完全無人での運行に必要な無監督自動運転は実現しておらず、今年2月にはステアリングホイールのない最初の車両が生産ラインから出たものの、Electrekは監督付きのロボタクシー・フリートの事故率が人間の運転手の約4倍に上ると伝えた。
開発体制の安定性も不透明要因だ。Cybercabプロジェクトでは、この数カ月で中核を担う上級リーダー3人が退社し、指揮系統に空白が生じているとされる。
Cybercabの165Wh/miという数値自体は、Teslaの技術力を示す成果といえる。ただ、事業面での真価は、Teslaが完全自動運転を巡る課題を実際に解決できるかどうかにかかっている。自動運転の商用化が進まなければ、この高効率も限定的な意味にとどまる可能性がある。