車載AIでは、機能の搭載そのものより継続コストを吸収できる事業構造の構築が課題となっている。写真=Shutterstock

自動車業界でAI機能の搭載が広がっている。ただ、実際に収益に結び付いているケースはなお限られるようだ。完成車メーカーは音声アシスタントやコネクテッドサービス、予測機能などへの投資を続けてきたが、利用が増えるほどクラウド関連の運用費も膨らみ、採算確保が大きな課題として浮上している。

SBD Automotiveがウェビナーで実施したリアルタイム調査では、参加者の多くが「現時点で車載AI機能のうち実際に収益を生んでいる比率は約18%にすぎない」と回答した。Cryptopolitanが米国時間24日に報じた。

完成車メーカーはこれまで、音声認識、ドライバー予測システム、デジタルショッピング機能、コネクテッドサービスなど、さまざまなAI技術を車両に取り入れてきた。ただ、技術を実装することと、それを安定収益につなげることは別問題だという見方が強い。

SBD Automotiveのロバート・フィッシャー氏は、「車載AI自体は新しい概念ではない」としたうえで、「AI機能単体で採算を取るのは依然として非常に難しい」と述べた。

業界が最大の負担として挙げるのは運用費だ。車載ハードウエアは一度搭載すれば追加コストは比較的小さいが、AI機能は利用のたびにクラウド計算コストが発生する。音声コマンドの処理や経路提案、予測機能、接続サービスの利用が増えるほど、費用も積み上がる構造になっている。

SBD Automotiveのアンディ・チウ氏は、「これは単なる技術の問題ではなく、採算管理の問題だ」と指摘。「車載AIの核心は、結局のところ収益性の管理にある」と説明した。AI機能が普及するほどコスト負担も膨らみやすい点を、とりわけ問題視している。

チウは「ユーザーがAI機能を使うたびにクラウド利用料が発生する。これは一度きりの設備投資ではなく、日々積み上がる運用費だ」と語った。

AI機能が定着しなければ研究開発費だけが残る。一方で、利用が拡大しても運用費が急増する可能性がある。結局のところ、メーカーは各機能がサブスクリプション収入や車両販売の拡大、顧客ロイヤルティの向上を通じて、十分な収益を生むことを示す必要がある。

課題としては、個々のAI機能ごとの損益を十分に把握できていないメーカーが多い点も挙がる。どの機能が収益に寄与し、どの機能が利益率を押し下げているのかが見えにくいケースが少なくないという。

SBD Automotiveは車載AI機能を4つの類型に整理した。顧客価値と収益性を両立する「英雄型」、満足度は高いものの無料提供が期待されやすい「ユーティリティ型」、利用頻度が低い一方で維持コストが大きい「ゾンビ型」、そしてユーザー体験をむしろ損なう「逆効果型」だ。

こうした分類は、車載AIを巡る競争の軸が、単純な機能拡大から持続可能な収益構造の見極めへ移りつつあることを示している。

こうした収益性への圧力は、足元のEV市場の減速とも無縁ではない。日産自動車系の部品メーカーJatcoは、欧州のEV需要が想定を下回ったことを受け、英サンダーランドで進めていたEVパワートレインの生産計画を撤回した。

Jatcoは当初、4870万ポンドを投じ、年間最大34万個のEVパワートレインユニットを生産する計画だった。

一方で、AI活用全般への期待が高まる半面、信頼面での課題は残る。Cars.comの調査では、車両購入を検討中、または最近新車を購入した消費者の44%が、AIベースの車両検索ツールを利用した経験があると答えた。回答者の71%は、車両情報の提供という点でAIを一定程度信頼しているとした。

ただし、AIの提案をそのまま受け入れる段階には至っていない。定期的にAIを利用する消費者でも、車種や価格に関するAIの推薦を抵抗なく受け入れるとの回答は半数程度にとどまった。さらに63%は、AI検索ツールが偏った推薦を示す可能性を懸念していると答えた。

最終的な確認段階では、車両販売プラットフォームやレビューサイトが引き続き重視されている。回答者の約3分の2は、自動車販売サイトや専門レビューサイトの方をより信頼すると回答。AI検索ツールを使った後でも、ディーラーやメーカーのWebサイトを追加で訪れるとした回答は41%に達した。

業界では、車載AIを巡る競争は単なる機能搭載の段階を過ぎ、どの機能が実際の売上や顧客獲得につながるのかを見極める局面に入ったとの見方が出ている。完成車メーカーには、利便性を高めながら、利用増がそのままコスト増につながる構造をどう制御するかが問われている。

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