米証券取引委員会(SEC、写真=Shutterstock)

米証券取引委員会(SEC)は、トークン化株式の取引を認める「イノベーション例外(Innovation Exemption)」案の公表を延期した。上場企業の同意を得ない第三者発行のリスクや、トークン保有者への株主権付与の実務を巡って懸念が強まっており、制度の詳細設計を見直す。

25日付のCointelegraphによると、SECは暗号資産関連のプラットフォーム上でトークン化株式を売買できるようにする提案について、当初予定していた時期の公表を見送る方針を固めた。

制度案は、ブロックチェーン基盤のプラットフォームで株式取引を認める一方、投資家の権利を従来の証券と同等に確保する内容だ。事業者には、配当や議決権など既存株主に付随する権利を、トークン保有者にも同様に提供することが求められる。

最大の論点は、上場企業の同意がないまま、第三者が特定企業の株式に連動するトークンを発行する可能性がある点だ。こうした発行形態を認めれば、既存の証券市場の秩序を損ないかねないとの懸念が出ている。

ブロックチェーン特有の匿名性の高さも課題として浮上した。実際の保有者をどう把握するのか、また保有者に株主権を行使する資格があるかをどう確認するのかが焦点になっている。

SECは制度の適用方法を巡り、数百人規模の市場参加者から意見を集めたとされる。制度の方向性そのものを撤回するのではなく、詳細を詰め直すために公表時期を後ろ倒ししたもようだ。草案はほぼ固まっていたが、公表直前の段階で追加検討に入ったという。

業界には、今回の延期を前向きに受け止める声もある。トークン化プラットフォームSecuritizeの最高経営責任者(CEO)、カルロス・ドミンゴは「この例外が適切な商品に適用されるかを確認することが重要だ」と述べた。

暗号資産取引所BullishのCEO、トム・ファーリーも、上場企業ではない第三者が株式持分を表すトークンを発行する問題に言及し、「延期して適切に修正したのは妥当な判断だ」と評価した。

今回の判断は、SEC内部の温度感の変化も映している。親暗号資産派として知られるヘスター・ピアース委員は24日、この例外について「適用範囲は限定的になるだろう」と述べた。投資家が現在二次市場で取引できる持分証券に近い商品を、デジタル上で表した形態にとどまる可能性を示したもので、トークン化株式を広く認めるというより、既存の規制枠内で限定的に容認する方向に近いとの見方が出ている。

トークン化証券の区分を巡る整理も進んでいる。SECは今年1月、トークン化証券を「カストディ型」と「合成型」に分類した。カストディ型は発行体が直接関与し、規制下の仲介機関が資産を保管する仕組みで、完全な株主権の付与を前提とする。合成型は実際の株式を保有せず、価格変動だけに連動する仕組みだ。業界では、今後の規制プロセスでSECがカストディ型を優先的に認める可能性が高いとみられている。

こうした議論は、米国の暗号資産政策全体の変化とも連動している。トランプ政権発足後、SECは暗号資産関連の金融商品に比較的前向きな姿勢を示しているとみられ、ウォール街でもトークン化やステーブルコイン市場への関心が急速に高まっている。

もっとも、市場拡大のペースは期待ほど速くないとの見方もある。RWA.xyzによると、トークン化された実物資産連動資産(RWA)の市場規模は約340億ドル(約5100億円)。このうちトークン化株式は約15億5000万ドル(約233億円)にとどまる。CitiとMcKinseyはそれぞれ、トークン化市場が2030年までに数兆ドル規模へ成長する可能性があると予測しているが、制度整備と市場採用は想定ほど進んでいない。

今後の焦点は、SECが上場企業の同意の範囲、発行主体の資格、株主権の担保手法、保有者確認の枠組みをどこまで明確に示せるかにある。これらの整理が、トークン化株式市場の拡大を左右することになりそうだ。

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