写真=SK hynixの321層QLC NAND新製品

AI推論の拡大を背景に、長期保管が必要なコールドデータが急増している。従来はHDDが担ってきた領域だが、需要増で供給リードタイムが長期化。NANDも供給制約が続く中、容量当たりコストに優れるQLC SSDの開発と採用が加速しており、ストレージ市場では需要構成の変化が鮮明になってきた。

AI推論インフラの拡大に伴い、対話履歴や文脈データといった長期保管対象のデータが急速に積み上がっている。こうしたコールドデータは通常HDDに保存されるが、足元では需要急増を受けてHDDの調達が難しくなっている。

iM証券は、ビッグテック各社が高価なGPUサーバの代替策として、NANDベースのストレージサーバに顧客の文脈データを長期保存する方式を現実的な選択肢として検討していると分析した。QLC SSDは容量当たりコストが低く、大規模なコールドデータの保存に適している。HDDの代替候補として有力なうえ、NANDの供給制約下でもコスト効率を確保しやすい点が強みとされる。

こうした需要の変化は輸出統計にも表れている。4月のSSD輸出額は、営業日ベースの1日当たり平均で前年同月比717%増の1億7000万ドルとなり、同期間のNAND単体の輸出増加率289%を大きく上回った。

NAND単体がメーカー間の供給取引を中心とするのに対し、SSDはデータセンター運営事業者が直接調達する完成品だ。SSD輸出の急増は、ビッグテックやクラウド事業者がストレージインフラの増強に本格的に動き始めたことを示している。

QLC SSDへの需要シフトを後押ししている要因の一つが、AI推論で発生するKVキャッシュ需要の急増だ。iM証券によると、従来はHBMに16ビット単位で保存していたデータがKVキャッシュを埋め、HBM容量の相当部分を占めていた。

GoogleがGemini 3.0の一部に適用した量子化圧縮技術「TurboQuant」は、このデータを3ビットまで圧縮し、KVキャッシュの占有率を6分の1以下に低減した。HBMへの依存は下がる一方、圧縮後のデータは最終的に別途保存する必要があり、その受け皿としてNAND需要が集まっている。

DRAMeXchangeによると、NANDのスポット価格は2月末以降の6週間で最大80%上昇した。DS投資証券は、1〜3月期のNAND契約価格が前期比55〜60%上昇したと分析し、Samsung Electronicsの同四半期のNAND営業利益率を53%と推定した。DRAMに続き、NANDも収益性改善局面に入ったとの見方が出ている。

一方、供給側の対応はすぐには進みにくい。SK証券によると、NANDメーカーは過去2〜3年にわたり減産と生産転換投資を優先してきた。この過程で高層化への移行が進み、ウエハー生産能力は自然減の状態にあるという。

◆AI推論拡大でストレージ供給網に再編圧力

国内で新たにNAND生産能力を増やす余地は限られており、Samsung ElectronicsとSK hynixは中国工場の活用を優先するとみられる。Samsung Electronicsの西安第1工場はV8への転換を終え、下期の立ち上げを控える。SK hynixの大連第2工場では、下期に30〜50Kの新規投資が実行される見通しだ。

Micronのシンガポール工場とSamsung ElectronicsのP5については、いずれも量産寄与の時期が2028年下期になるとされた。

主要メーカーの新工場が量産効果を本格的に発揮する時期は2027〜2028年に集中する見通しだ。需給の引き締まった状態が続く中、QLC SSDを軸とするストレージ需要の再編は一段と進む可能性が高い。業界関係者は「増設時期までは短期的に意味のある供給増を見込みにくい」としたうえで、「NAND価格の上昇基調は続くだろう」と述べた。

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