写真=デジタルトゥデイ

Acrossは、生成AIの回答最適化を支援するGEO(生成エンジン最適化)ソリューション「GPTO」を展開している。イ・ジェホン代表は、生成AIの回答枠で優位を確保した企業が、AI時代の産業主導権を握るとの見方を示した。

イ代表は「AI時代は、AIの回答を押さえた側が勝つ。勝者が書いたものが真実になる」と語る。

Acrossは、GPTOに加え、AI上での言及順位を集計するプラットフォーム「GenRank」も開発している。手法の検証段階で、韓国のアクセラレーターPrimerと、ブロックチェーン・AI分野のベンチャーキャピタルHashedから出資を受け、2025年8月に法人を設立した。足元では代表を含む5人体制で事業を進めており、2026年4月の月間売上高は10億ウォン(約1億1000万円)を超え、損益分岐点に到達したという。

イ代表がGEO事業に乗り出したきっかけは、職を失ったことだった。KAIST(韓国科学技術院)産業工学科を卒業後、Cheil Worldwideでデータサイエンティストとしてキャリアを開始。以降10年間、企画やマーケティング分野で経験を積んだ。その後は米国系企業やデジタル資産発行会社で、営業・マーケティングの業務委託として働き、月1500万ウォン(約165万円)の報酬を得ていたという。

一時はある企業から正社員としての入社提案も受けたが、暗号資産建てで受け取っていた業務委託報酬が提示年収を上回り、交渉はまとまらなかったとしている。

起業を決めた後は、各地のハッカソンに参加しながら技術系の共同創業者を探した。ただ、思うようには進まず、2度の失敗を経て自ら開発を学ぶ道を選んだ。生活コストの低い東南アジアに拠点を移し、1日10時間ずつオンライン講義を受講。約1年後にコードの理解が進んだタイミングで、AIコーディングツール「Cursor」が登場し、アプリ開発のスピードが一気に上がったという。

複数のアプリを開発・公開したものの、大きな成功には結び付かなかった。そうした過程で生まれたのが、GPTOの着想だった。

ブロックチェーン関連のハッカソンに向けて調査を進める中で、イ代表は生成AIの回答が現実と大きく乖離していると感じたという。業界で5年の経験がある立場から見ても誤情報が目立ち、「なぜこうなるのか」を掘り下げる中で、ある結論にたどり着いた。

イ代表は「AIは結局、インターネット上にある情報を根拠に答える。ネット上に何があるかが、AIの回答を決める」と説明する。

この気付きから、「自社が狙う情報をネット上に適切に配置すれば、AIがそれを回答に反映するのではないか」という発想に至った。当時はAEOやGEOという言葉が広く定着する前で、約3カ月にわたって試行錯誤を重ね、手法を固めたという。

それを製品化したのがGPTOだ。ユーザーが生成AIに特定の質問を投げた際、企業側が意図する回答に近づくよう支援するソリューションで、戦略立案からコンテンツ配信までの工程をAIが担う。イ代表は「毎週、顧客が重視する質問をLLMに入力して結果をモニタリングし、出力原文を取得した上で、自社と競合の状況を分析し、最適化の設計を進める」と話す。

さらに「配信先は400超のサイトに及ぶが、そのプロセスもすべてAIが処理する」と述べた。

イ代表はこの仕組みについて、「AIに回答を食べさせるようなものだ」と表現する。「AIが情報の並ぶ街を見渡すとき、目立つ屋外広告を立て、そこにある情報を拾わざるを得ない環境をつくるイメージだ」と説明した。

同氏によれば、GEOが機能する背景には計算資源の制約がある。AIが毎回、あらゆる情報を検索して回答すれば精度は高まるが、膨大な計算コストがかかるためだ。イ代表は「少ないリソースで正確な回答を返すアルゴリズムが適用される」とした上で、「GPTOは、どのモデルにも通用する原理原則に沿った手法を採っているため、アップデートの影響を受けにくい」と語った。

足元の顧客は約500社。Daehong Communications、AWS、CJなどの大手企業やグローバル企業が含まれる。料金体系は、企業が狙う質問数に応じた月額課金制。成果は、質問別・モデル別の言及率を週次で追跡するモニタリングダッシュボードで測定する。イ代表は、広告代理業ではなく、ソリューション企業として事業を展開していく考えを示した。

現在は一部の営業活動を自社で担っているが、今後は販売パートナー中心の体制へ移行する方針だという。

組織運営では「AIネイティブはコンセプトではなく、実体であるべきだ」との考えを掲げる。「AIが最適な領域にだけAIを使う」のが信条で、「AIが自分より優れていることを前提にしてこそ、想像以上のことができる」と話す。

一方で、すべてをAIで置き換えるわけではない。YouTubeショート動画の制作では当初、自動化を試したものの成果が出ず、現在は業界経験のあるプロデューサーとの協業モデルに切り替えたという。

採用でも効率を重視する。イ代表は「経験が多い人ほど、従来のやり方の慣性を捨てにくい」とし、「いずれにせよ仕事はAIが担うため、採用で経歴や専攻は重視しない。大学生でもよく、見るのは学習能力と態度だ。そうすれば誰でも成果を出せる」と述べた。

企業のGEO戦略については、今が参入の好機だと強調する。イ代表は「SEOも初期は参入しやすかった。当時に埋め込んだものは、アルゴリズムが変わっても生き残った。いま取り組めば、今後環境がどう変わっても生き残る可能性が高い」と語った。

短期目標は、GEOの代名詞としてGPTOを定着させることだ。年内には東南アジア、日本、中東でパートナー企業を確保する計画で、イ代表は「海外の販売パートナー開拓はHashedの支援を受けている」と説明。「GPTOは言語や国に関係なく、同じように機能する」と述べた。

中長期では、GenRankをAI回答順位集計のグローバル標準に育てる構想を描く。メディア企業がマーケットプレイスに参加し、企業はインデックスを通じて競合と比べたAI上の露出状況を把握し、そのまま最適化サービスを購入できる仕組みを目指すという。

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